IT業界で長く経験を積んできた人でも、転職先で環境が大きく変わると「自分のスキルは通用しないのではないか」と感じることがあります。特にSESで多様な現場を経験してきた人が、事業会社や高度なアジャイル開発の現場へ移った場合、技術力だけではなく仕事の進め方や求められる役割の違いに戸惑うことがあります。
しかし、経験が足りないと感じる時期は、必ずしもIT業界への適性がないという意味ではありません。この記事では、SES経験者が新しい開発環境で苦戦する理由や、30代から今後のキャリアを考える際のポイントについて解説します。
SES経験10年でも新しい開発環境で苦戦する理由
SESでは、プロジェクトごとに異なる環境へ参加し、求められた業務を遂行する能力が身につきます。一方で、アジャイル開発の現場では、単に決められた作業をこなすだけではなく、自ら考えて提案する力やチームで価値を作る姿勢が求められます。
そのため、これまで高い評価を受けていた人でも、開発文化が違う環境では戸惑うことがあります。これは能力不足というより、経験してきた仕事の種類が違うことが原因であるケースが多いです。
例えば、SESで設計書通りに実装やテストを担当していた人が、アジャイルチームで「次のスプリントでは何を改善するか」「ユーザー価値を高めるにはどうするか」と問われると、初めは難しく感じることがあります。
アジャイル開発で求められる能力は従来型開発と異なる
アジャイル開発では、技術スキルだけではなくコミュニケーション能力や問題解決能力が重要になります。チームメンバー同士で頻繁に相談しながら、状況に応じて方向修正していくことが特徴です。
ウォーターフォール型の開発では、工程や役割が明確に分かれていることが多いですが、アジャイルでは開発者自身が設計や改善に関わる場面も増えます。
そのため、以前の職場では評価されていた経験が、新しい環境ではそのまま評価につながらないことがあります。しかし、それは経験が無意味なのではなく、新しい働き方への適応期間が必要ということです。
年下の優秀なエンジニアに助けてもらうことは問題ではない
転職後に年下のメンバーから教えてもらう状況になると、自信を失ってしまう人もいます。しかし、IT業界では年齢よりも経験領域や専門分野によって得意不得意が大きく変わります。
20代のエンジニアが最新技術に詳しい一方で、30代以上の経験者は顧客調整、障害対応、プロジェクト管理、業務理解など別の強みを持っていることがあります。
例えば、クラウド技術に詳しい若手から知識を学びながら、過去の現場経験を活かして設計レビューやリスク管理で貢献するという働き方もできます。
ITへの興味が薄い場合はキャリアを考え直すべきか
ITエンジニアとして働くには、技術への関心が必要だと言われます。しかし、必ずしも最新技術を追い続けることだけがIT人材の条件ではありません。
IT業界には、開発だけではなく、プロジェクト管理、ITコンサルティング、社内SE、品質管理、カスタマーサクセスなど多くの職種があります。
もしコードを書くことや技術習得そのものに強い興味がない場合でも、IT経験を活かして別の役割へ移る選択肢があります。10年のSES経験は、決してゼロからのキャリアではありません。
30代中盤からIT以外へ転職する場合の考え方
30代になると未経験分野への転職は20代より難しくなる傾向があります。しかし、これまで積み上げた経験を関連付ければ、新しい分野へ移ることは十分可能です。
重要なのは「ITを辞めるか続けるか」という二択で考えるのではなく、自分の得意なことを整理することです。
例えば、顧客との調整が得意ならIT営業やITコンサル寄りの仕事、チーム管理が得意ならプロジェクトマネジメント方面へ進むなど、経験を活かした方向転換もできます。
転職直後に辞めるか一年続けるか判断するポイント
新しい環境で苦戦している時期に、すぐ退職を決断するのは慎重に考える必要があります。転職直後は業務知識、人間関係、開発ルールなど覚えることが多く、本来の能力を発揮できないことが珍しくありません。
まずは半年から一年程度、現在の環境で何ができるようになるかを見ることも一つの方法です。
ただし、体調を崩すほどのストレスがある場合や、明らかに価値観と合わない環境である場合は、無理して続ける必要はありません。働きながら情報収集を行い、選択肢を増やしておくことが大切です。
今後のITキャリアを考えるために整理したいこと
キャリアに迷った時は、まず「何ができるか」「何が苦手か」「何なら続けられるか」を整理すると方向性が見えやすくなります。
- これまで評価された仕事は何か
- 苦痛を感じずにできる業務は何か
- 今後伸ばしたいスキルは何か
- 年収や働き方で譲れない条件は何か
IT業界で10年働いた経験は、市場価値を考える上で大きな資産です。現在の環境で苦戦しているからといって、すぐに「自分には向いていない」と結論を出す必要はありません。
まとめ
SES経験が長い人がアジャイル開発の現場へ移り、技術や仕事の進め方の違いに苦労することは珍しくありません。それは能力不足ではなく、求められる役割が変化したことによる適応期間である可能性があります。
30代からのキャリアでは、これまでの経験を捨てるのではなく、どの部分を活かせるかを考えることが重要です。
ITを続ける場合も、別の職種へ挑戦する場合も、10年間積み重ねてきた経験は大きな強みになります。焦って結論を出すよりも、現在の環境で学びながら、自分に合った働き方を探していくことが将来のキャリアにつながります。


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