工業簿記を学習していると、製造間接費を予定配賦している場合に「仕掛品勘定には予定配賦額を書くのに、製造原価報告書には実際発生額を書くのはなぜなのか」と疑問に感じることがあります。
これは、仕掛品勘定と製造原価報告書では、それぞれ目的が異なるためです。この記事では、製造間接費の予定配賦の仕組みと、なぜ記録する金額が異なるのかを具体例を使って分かりやすく解説します。
製造間接費の予定配賦とは何か
製造間接費とは、製品を作るために発生する費用のうち、特定の製品に直接結びつけることが難しい費用のことです。
例えば、工場の電気代、工場長の給料、機械の減価償却費、工場の修繕費などが製造間接費に該当します。これらは複数の製品に共通して発生するため、製品ごとの正確な金額をすぐに計算することが難しい特徴があります。
そこで工業簿記では、製造間接費をあらかじめ決めた配賦率によって製品に配分する「予定配賦」という方法を使います。
予定配賦を行う理由は製品原価を早く計算するため
製造間接費を予定配賦する大きな理由は、製品原価を迅速に計算するためです。
もし製造間接費を実際発生額だけで計算すると、月末になって電気代や修繕費などの金額が確定するまで製品原価を求めることができません。そのため、製造途中の製品である仕掛品の原価も正確に計算できなくなります。
例えば、ある製品を1月に製造して販売する場合、1月末まで実際の工場費用が分からないと、販売価格の設定や利益計算にも影響してしまいます。そのため、予定配賦によって事前に製造間接費を製品へ負担させます。
仕掛品勘定に予定配賦額を記入する理由
仕掛品勘定は、製造途中の製品にいくら原価が投入されているかを表す勘定です。そのため、製品に負担させるべき製造原価を記録する必要があります。
予定配賦を採用している場合、仕掛品に加算される製造間接費は「予定配賦額」になります。これは、製品原価を計算するときには予定した基準で原価を集計するためです。
例えば、予定配賦率が1時間あたり500円で、製品Aの作業時間が100時間だった場合、仕掛品には500円×100時間=50,000円の製造間接費を計上します。この金額が製品Aの原価として扱われます。
製造原価報告書に実際発生額を記入する理由
一方、製造原価報告書は「実際に工場でどれだけ費用が発生したのか」を報告するための書類です。
そのため、製造原価報告書では製造間接費の実際発生額を表示します。ここでは、実際のコストがいくらだったのかを把握することが目的だからです。
例えば、予定では製造間接費が50万円だったとしても、実際には55万円発生していた場合、製造原価報告書では55万円を表示します。そして、予定配賦額との差額5万円は「製造間接費配賦差異」として処理します。
予定配賦額と実際発生額の差額はどう処理するのか
予定配賦を行うと、必ず予定額と実際額の間に差額が発生する可能性があります。この差額を「製造間接費配賦差異」と呼びます。
例えば、製造間接費の実際発生額が100万円、予定配賦額が95万円だった場合、5万円分だけ実際の方が多く発生しています。この場合は不利差異として処理します。
反対に、実際発生額が90万円で予定配賦額が95万円の場合は、予定より費用が少なく済んだため有利差異となります。
仕掛品と製造原価報告書で金額が違って見える理由
仕掛品勘定と製造原価報告書で異なる金額が出てくるのは、間違いではありません。それぞれ見ている対象が違うためです。
| 項目 | 目的 | 使用する金額 |
|---|---|---|
| 仕掛品勘定 | 製品に負担させる原価を計算する | 予定配賦額 |
| 製造原価報告書 | 実際に発生した製造原価を報告する | 実際発生額 |
つまり、仕掛品は「製品原価を計算するための記録」、製造原価報告書は「実際の製造活動の結果を報告する書類」と考えると理解しやすくなります。
まとめ|予定配賦は製品原価計算、製造原価報告書は実績確認のため
製造間接費を予定配賦している場合、仕掛品勘定に予定配賦額を記入するのは、製品に負担させる原価を計算するためです。
一方で、製造原価報告書では実際に発生した製造原価を報告する目的があるため、実際発生額を記載します。
「予定配賦額」と「実際発生額」が違うのは、計算ミスではなく、それぞれの資料が持つ役割が異なるためです。この考え方を理解すると、工業簿記の製造間接費の問題も解きやすくなります。


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