財務諸表監査でChatGPTやCopilotを使うのは危険?監査法人が生成AIを活用する際の注意点と安全な使い方

会計、経理、財務

近年、監査法人でもChatGPTやCopilotなどの生成AIを業務効率化のために活用する動きが広がっています。文書の要約、監査調書の整理、データ分析、証憑の確認補助など、時間のかかる作業を効率化できる可能性があります。

一方で、財務諸表監査では企業の非公開情報や重要な会計データを扱うため、「生成AIに入力して本当に安全なのか」「法人向けプランなら問題ないのか」と不安を感じる人も少なくありません。

この記事では、財務諸表監査でChatGPTやCopilotを利用する場合のリスク、法人向けAIサービスの特徴、安全に活用するためのポイントについて解説します。

財務諸表監査で生成AIを利用するメリット

ChatGPTやCopilotなどの生成AIは、監査人の判断を置き換えるものではありませんが、情報整理や作業補助の面で大きな効果が期待できます。

例えば、監査基準や社内マニュアルの要約、長い契約書の重要部分の抽出、会議議事録の整理など、人間が読むと時間がかかる作業を短時間で処理できます。

また、Excelデータや仕訳データの分析補助として利用することで、異常値の発見や確認ポイントの整理など、監査人がリスクを検討する際の補助ツールとして活用できます。

監査業務でChatGPTやCopilotを使う際の主なリスク

財務諸表監査における最大の注意点は、情報漏えいリスクです。監査業務では、クライアント企業の売上情報、取引先情報、給与情報、内部資料など、一般公開されていない情報を扱います。

個人向けの生成AIサービスに監査資料をそのまま入力すると、サービス提供会社の利用規約や設定によっては、入力データがモデル改善などに利用される可能性があります。そのため、監査法人の業務で利用する場合は慎重な管理が必要です。

また、生成AIは常に正しい回答を出すとは限りません。会計基準の解釈や監査判断に関わる内容では、AIの回答をそのまま採用すると誤った結論につながる危険があります。

法人向けChatGPTやCopilotなら安全なのか

法人向けプランでは、一般的に個人向けサービスよりも企業利用を想定したセキュリティ機能が提供されています。例えば、入力データの管理、アクセス制御、管理者による利用状況の把握など、組織で利用しやすい仕組みが整えられています。

ただし、「法人向けプランだから絶対に安全」というわけではありません。監査法人側で利用ルールを設定し、どの情報を入力してよいか、誰が利用できるかを明確にする必要があります。

例えば、公開済みの会計基準の整理や一般的な監査手続のアイデア出しであれば利用しやすいですが、クライアント名や具体的な財務数値を含む監査調書をそのまま入力する場合は、法人の規程や契約上の確認が必要になります。

財務諸表監査で生成AIを安全に活用する方法

生成AIを監査業務で活用する場合は、「AIに判断させる」のではなく「監査人の作業を補助させる」という考え方が重要です。

安全な活用例としては、以下のようなものがあります。

  • 監査基準や会計基準の概要整理
  • 長文資料の要約補助
  • 監査手続のチェックリスト作成補助
  • 分析結果の説明文作成補助
  • Excelデータ加工のコード作成補助

一方で、監査意見の判断、重要な虚偽表示リスクの評価、証拠の十分性判断など、専門家としての判断が必要な部分は、必ず監査人自身が検討する必要があります。

監査法人で導入する場合に決めるべきルール

中小監査法人で生成AIを導入する場合、まず利用目的と禁止事項を明確にすることが重要です。

例えば、「クライアントの識別情報を削除したデータのみ入力可能」「監査調書の作成には利用するが最終判断は担当者が行う」「利用履歴を管理する」といったルールを設定することでリスクを抑えられます。

また、監査法人内でAI利用に関する研修を行うことも重要です。生成AIは便利なツールですが、利用者が仕組みや限界を理解していなければ、誤った使い方につながります。

生成AIは監査人を代替するものではなく能力を高める道具

財務諸表監査では、最終的な責任は監査人にあります。生成AIは大量の情報処理や文章作成を効率化できますが、企業の状況を理解し、リスクを判断する専門的な役割まで代替するものではありません。

例えば、AIが「この仕訳は異常です」と指摘したとしても、それが本当に不正なのか、特殊な取引なのかを判断するには監査人の経験や専門知識が必要です。

そのため、生成AIを正しく管理しながら活用できれば、中小監査法人でも限られた人員でより質の高い監査を行うための強力な補助ツールになります。

まとめ:法人向けAIでも管理と監査人の判断が不可欠

財務諸表監査でChatGPTやCopilotを利用することは、適切な管理を行えば危険な行為とは限りません。法人向けプランはセキュリティ面で有利ですが、それだけでリスクがなくなるわけではありません。

重要なのは、入力する情報の範囲を決め、AIの回答を鵜呑みにせず、監査人が最終判断を行う体制を作ることです。

生成AIは監査品質を低下させるものではなく、正しく使えば監査人の業務効率や分析力を高めるための有効なツールになります。

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