簿記2級の商業簿記では、退職給付引当金を取り崩す仕訳で迷う問題がよく出題されます。特に、前期末に見積もった退職給付額と実際の支給額が異なる場合、差額をどのように処理するのか判断が難しいポイントです。
この記事では、退職一時金の支払い時に退職給付引当金をどの金額で取り崩すのか、「繰入れは決算時のみ行う」という条件の意味も含めて、簿記2級レベルで理解できるように解説します。
退職給付引当金の基本的な考え方
退職給付引当金とは、将来従業員へ支払う退職金について、あらかじめ費用として計上しておくための負債科目です。
会社は毎年決算時に、将来支払うと見込まれる退職金額を計算し、その増加分を退職給付費用として計上します。そして、同時に退職給付引当金を増加させます。
つまり、退職給付引当金は従業員ごとの預金のように管理するものではなく、会社全体として将来の退職金支払いに備えて積み立てている負債という考え方になります。
退職者への支払い時は引当金を取り崩す
従業員が退職し、実際に退職一時金を支払う場合、それまで計上していた退職給付引当金を取り崩します。
今回のように、前期末時点でX氏の退職一時金が19,800,000円と見積もられていた場合、その金額についてはすでに前期までに費用計上済みです。
そのため、退職時にはまず退職給付引当金19,800,000円を減少させる仕訳を行います。
実際の支給額との差額はどのように処理するのか
問題となるのは、見積額19,800,000円と実際の支給額21,000,000円との差額1,200,000円です。
この差額については、退職給付引当金を追加で取り崩すことはできません。なぜなら、引当金として計上されているのはあくまで過去の決算時点で見積もった金額だからです。
決算時以外に退職給付引当金への繰入れを行わないという条件がある場合、期中に発生した不足額については退職給付費用として処理します。
したがって、この問題ではパターンBの考え方が正しくなります。
正しい仕訳の考え方を確認する
退職一時金21,000,000円のうち、19,800,000円はすでに引当済みの金額です。そのため、まず退職給付引当金を19,800,000円減少させます。
残りの1,200,000円は、以前の見積もりより実際の退職金額が増加した部分なので、退職給付費用として追加計上します。
仕訳は次のようになります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 給料 | 400,000円 | 所得税預り金 | 470,000円 |
| 退職給付引当金 | 19,800,000円 | 住民税預り金 | 30,000円 |
| 退職給付費用 | 1,200,000円 | 当座預金 | 20,900,000円 |
このように、すでに計上済みの引当額は引当金で処理し、不足分だけを費用として追加処理するのが基本です。
会社全体の退職給付引当金残高は関係するのか
問題文にある「前期末における退職給付引当金の残高356,000,000円」という数字を見ると、会社全体の残高から21,000,000円をそのまま減らすようにも思えます。
しかし、簿記の仕訳では退職者個人ごとの引当額を考えて処理する必要があります。会社全体の引当金残高は、帳簿上の残高確認のために示されている情報であり、今回の個別処理の基準にはなりません。
例えば、会社全体で3億円以上の退職給付引当金があったとしても、その中でX氏について事前に計上されていた金額が19,800,000円なら、その金額を基準に取り崩します。
「繰入れは決算時のみ行う」という条件の意味
簿記問題で「退職給付引当金への繰入れは決算時のみ行う」と書かれている場合、期中に不足分が発生しても、その場で引当金を追加計上しないという意味になります。
もし決算時以外にも引当金を調整できる設定なら、差額分を退職給付引当金に追加する考え方もあります。しかし、今回の条件では期中処理として費用計上する必要があります。
この条件は、受験者が「差額をすぐ引当金に入れるのではなく、費用として処理する」という判断ができるかを見るために設定されています。
まとめ|退職給付引当金は見積済み金額を基準に処理する
簿記2級の退職給付引当金の問題では、実際の退職金額ではなく、すでに引当済みの金額を確認することが重要です。
今回のケースでは、19,800,000円は退職給付引当金を取り崩し、差額の1,200,000円は退職給付費用として処理するため、パターンBが正しい考え方になります。
退職給付引当金は会社全体の残高から自由に減らすものではなく、過去に費用計上された範囲を取り崩すものだと理解すると、同様の問題にも対応しやすくなります。


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