派遣料金が350円上がっても時給は115円しか上がらない?マージン率と派遣社員の賃金の仕組みを解説

派遣

派遣先が派遣会社へ支払う料金が引き上げられたのに、派遣社員本人の時給はそれほど上がらなかった場合、「差額はどこへ行ったのだろう」「マージン率を考えると、もっと時給が上がってもよいのでは」と疑問を感じることがあります。

しかし、派遣先が支払う派遣料金と派遣社員に支払われる賃金は別のものであり、派遣料金の増額分が一定割合でそのまま時給に反映される仕組みではありません。また、派遣会社が公表するマージン率についても、単純な利益率として理解すると実態とのズレが生じます。

この記事では、有期雇用から無期雇用派遣へ切り替わる場面を例に、派遣料金、時給、マージン率の関係と、昇給額に納得できない場合に確認したいポイントを解説します。

派遣先が支払う「派遣料金」と派遣社員の「時給」は別物

派遣という働き方では、派遣先企業と派遣社員が直接雇用契約を結んでいるわけではありません。派遣社員を雇用するのは派遣元である派遣会社であり、派遣先は派遣会社との契約に基づいて派遣料金を支払います。

そのため、例えば派遣先と派遣会社との交渉で1時間当たりの派遣料金が350円上がったとしても、派遣社員の時給が350円上がることを意味するわけではありません。派遣料金の改定と賃金改定は関連することがあっても、金額が一対一で連動するとは限らないためです。

派遣社員の賃金については、雇用契約や派遣会社の賃金制度に加え、派遣労働者の待遇決定方式なども関係します。したがって、「派遣先が350円多く払ったのだから、そのうち一定額は必ず本人へ支給される」という単純な計算だけでは判断できません。

マージン率36%なら36%が派遣会社の利益になるわけではない

派遣会社について調べる際によく目にするのが「マージン率」です。ここで特に注意したいのは、マージン率はそのまま派遣会社の利益率を表す数字ではないという点です。

派遣料金と派遣社員の賃金との差額には、派遣元が負担する社会保険料などの法定福利費、有給休暇に関係する費用、教育訓練費、福利厚生費、募集・採用や労務管理にかかる費用などが含まれます。そのうえで残った部分から派遣会社の事業運営費や利益が生じます。

例えばマージン率が36%と表示されていたとしても、「派遣料金の36%を会社が利益として取っている」と解釈するのは適切ではありません。派遣会社が公開しているマージン率を見る場合は、教育訓練や福利厚生などの情報も合わせて確認することが重要です。

350円の料金アップに対して115円の昇給は少ないのか

派遣先側の料金が1時間当たり350円増額され、派遣社員本人の時給が115円増額された場合、単純な差額は235円です。しかし、この235円がそのまま派遣会社の追加利益になったと断定することはできません。

無期雇用派遣では、派遣元との雇用契約が無期になることによって、派遣先との契約が終了した後も雇用関係が継続する場合があります。派遣会社側から見ると、待機期間を含む雇用維持など、有期雇用とは異なるコストやリスクを考慮して賃金制度を設計している場合があります。

一方、115円という昇給額が本人の能力や仕事内容に対して妥当かどうかは別の問題です。派遣料金の上昇額だけではなく、同種業務の賃金水準、担当業務、責任の程度、経験、派遣会社の賃金規程などを含めて判断する必要があります。

有期雇用から無期雇用派遣になると給与はどう変わる?

「無期雇用になれば必ず大幅に時給が上がる」と考えられることがありますが、無期雇用への転換そのものが一定額の昇給を保証するわけではありません。「有期・無期」は主として雇用契約に期間の定めがあるかどうかを示すものです。

また、無期雇用派遣といっても会社によって制度は異なります。時給制を継続する会社もあれば、月給制を採用している会社もあり、賞与や各種手当、待機時の賃金などの扱いにも違いがあります。

そのため、時給の上昇額だけを見るのではなく、無期転換後の基本給・手当・賞与・昇給制度・退職金相当の待遇・派遣先が決まっていない期間の扱いなどを含めて比較した方が、実質的な待遇を判断しやすくなります。

「上がらないよりマシ」で終わらせる前に確認したいこと

昇給したこと自体はプラスですが、金額に疑問があるなら、理由を確認することに問題はありません。感情的に「残りの235円はどこへ行ったのですか」と尋ねるより、賃金決定の仕組みを確認する形で質問すると話が進みやすくなります。

例えば、「今回、無期雇用への変更で時給が115円上がりましたが、この金額はどのような基準で決定されたのでしょうか」「今後の昇給基準についても教えてください」と確認できます。

さらに、自分の派遣会社が採用している待遇決定方式や賃金規程、評価制度について説明を受けることも重要です。派遣会社のウェブサイトなどで公開されているマージン率等の情報についても、数字だけでなく内訳を確認すると理解しやすくなります。

時給交渉では「派遣料金との差額」より自分の市場価値を示す

時給アップを希望する場合、「派遣先がこれだけ払っているのだから自分にもください」という主張だけでは交渉が難しいことがあります。それよりも、自分が派遣先へ提供している価値を具体的に示す方が効果的です。

例えば、通常業務に加えて新人教育を担当している、処理件数が増えた、担当範囲が広がった、専門的な業務を任されている、長期間安定して勤務しているといった実績は交渉材料になります。

「現在の仕事内容と実績を踏まえて、次回更新時に時給の再検討は可能でしょうか」と相談すれば、単なる不満ではなく待遇改善の交渉として伝えられます。

派遣会社を比較する時は時給以外も見る

現在の待遇に納得できない場合、他の派遣会社や求人の条件を調べて自分の市場価値を確認する方法もあります。同じ職種・地域・経験年数で、どの程度の時給が提示されているのかを見ると、現在の待遇を客観的に判断できます。

ただし、表示時給だけで転職を決めるのは慎重にした方がよいでしょう。交通費、賞与・退職金相当の待遇、福利厚生、勤務時間、残業、契約の安定性などを含めて比較する必要があります。

例えば時給が100円高い求人でも、通勤時間が大幅に増えたり、現在より勤務が不安定になったりすれば、必ずしも条件改善とはいえません。年収と働きやすさの両面から比較することが大切です。

まとめ

派遣先が派遣料金を350円引き上げても、派遣社員本人の時給が同じ350円、あるいは一定割合で上がるとは限りません。また、マージン率は派遣会社の純粋な利益率ではなく、社会保険料など派遣社員の雇用に必要なさまざまな費用を含む点にも注意が必要です。

したがって、350円の料金増額に対して115円しか昇給しなかったという数字だけから、不当に差額を取られていると判断することはできません。一方で、昇給額に納得できなければ、その決定基準や今後の昇給制度について派遣会社へ説明を求めることには十分な意味があります。

「上がっただけ良かった」と無理に割り切る必要も、「差額がおかしい」と即断する必要もありません。派遣料金、賃金制度、無期雇用後の待遇、自分の仕事内容、同業務の市場時給を整理したうえで、現在の条件が自分にとって妥当なのかを判断することが重要です。

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