法人が保有する株式などの有価証券について、業績悪化によって価値が下落した場合、会計上は評価損を計上することがあります。しかし、法人税の計算では会計上の評価損がそのまま損金として認められるとは限りません。この記事では、有価証券評価損の税務上の扱い、別表四・別表五での処理、会社が債務超過や休業状態になった場合の考え方について解説します。
有価証券評価損とは何か
有価証券評価損とは、会社が保有している株式などの有価証券について、取得時の帳簿価額よりも時価や実質価額が大きく下落した場合に計上する損失のことです。
例えば、会社が株式を1億2,000万円で取得したものの、その株式の価値が1,000万円程度まで低下した場合、会計上では差額を評価損として計上することがあります。
ただし、法人税では「将来的に価値が戻る可能性がある単なる含み損」と「回復が見込めない損失」を区別しており、一定の条件を満たさなければ損金算入は認められません。
会計上の評価損と税務上の損金算入は異なる
企業会計では、財務状況を適切に表示するため、保有資産の価値低下を反映することがあります。しかし、税務では課税所得を計算するため、損金として認める範囲を厳格に定めています。
そのため、有価証券評価損を会計上計上した場合でも、法人税申告書では一度加算調整を行うケースがあります。これが別表四で加算される理由です。
また、その後税務上損金算入できる状態になった場合には、別表五で管理していた税務上の差額を解消する処理を行うことになります。
別表四で加算し別表五に積み立てる意味
法人税申告書の別表四は、会計上の利益から税務上の所得を計算するための調整表です。会計上は費用になっているものの、税務上は認められないものを加算することで課税所得を調整します。
一方、別表五は、税務上の資産や負債の状態を管理するための表です。将来損金算入できる可能性がある項目について、税務上の調整額を記録しておきます。
つまり、有価証券評価損を別表四で加算し別表五に残している状態は、「現在は損金として認めないが、将来条件を満たせば損金化できる可能性がある」という税務上の管理をしている状態です。
債務超過や休業状態になった場合の損金算入の可能性
会社の財務状況が著しく悪化し、保有する有価証券の価値回復が見込めない状況になった場合には、税務上も評価損の損金算入が認められる可能性があります。
判断材料としては、単に一時的に株価が下落したという事情だけではなく、発行会社の財政状態、事業継続の可能性、債務超過の状況、金融機関による対応などを総合的に確認する必要があります。
例えば、投資先企業が長期間赤字を続け、債務超過となり、金融機関からの借入返済も困難になっている場合には、株式価値が実質的に失われていると判断されることがあります。
解散登記前でも評価損の検討は可能か
有価証券評価損の損金算入については、必ずしも会社の解散登記が完了していることだけが条件ではありません。
重要なのは、その時点で株式などの価値が著しく低下し、その価値回復が困難であることを税務上説明できるかどうかです。
そのため、休業状態で従業員を解雇している、債務超過が継続している、保証人による代位弁済が発生しているといった事情は、評価損の損金算入を検討する際の重要な判断材料になります。
損金算入を検討する際に準備すべき資料
税務上、有価証券評価損を認めてもらうためには、単に「価値がなくなった」と主張するだけでは十分ではありません。客観的な資料によって状況を説明する必要があります。
具体的には、投資先企業の決算書、債務超過を示す資料、金融機関との交渉記録、事業停止の状況、清算や再建に関する資料などが考えられます。
例えば、株式取得時は将来性があると判断して投資したものの、その後事業が停止し、資産より負債が大きくなっている場合には、その経緯を資料として残しておくことが重要です。
まとめ|有価証券評価損の損金算入は状況証拠が重要
有価証券評価損は、会計上計上しただけでは自動的に法人税の損金になるわけではありません。税務上は、価値の著しい低下や回復可能性の有無を確認して判断されます。
過去に別表四で加算し別表五で管理していた評価損についても、会社の経営状況が大きく悪化し、価値回復が見込めない状態になれば損金算入を検討できる場合があります。
ただし、実際の適用判断は会社の状況や保有株式の性質によって変わるため、申告前には税理士などの専門家に相談し、必要な資料を整えたうえで慎重に判断することが大切です。


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