司法書士試験の商業登記記述では、募集株式の発行に関する論点が頻繁に出題されます。その中でも、「既存株主に株式を割り当てているのに、なぜ第三者割当になるのか」という疑問は、多くの受験生が混乱しやすいポイントです。
この記事では、募集株式の発行における第三者割当の意味、株主割当との違い、商業登記記述で判断する際の考え方について分かりやすく解説します。
募集株式の発行における第三者割当とは
会社法上の募集株式の発行では、株式を引き受ける者をどのように決めるかによって、手続きが変わります。代表的な方法として、「株主割当」と「第三者割当」があります。
第三者割当とは、既存株主であるかどうかに関係なく、特定の者に対して新株を割り当てる方法です。重要なのは、「その人が現在株主かどうか」ではなく、「既存株主全員に持株数に応じて新株を引き受ける権利を与えているか」という点です。
つまり、現在株主である人に新株が割り当てられていたとしても、その株主だけを選んで割り当てている場合は第三者割当になります。
株主割当との違いは「対象者」ではなく「権利付与の仕組み」
司法書士試験で混乱しやすいのは、「第三者」という言葉から、会社と無関係な外部の人だけを指すように感じてしまう点です。
しかし、会社法上の第三者割当でいう「第三者」は、既存株主以外という意味ではありません。既存株主であっても、株主割当の手続きを取らずに特定の者として扱われれば第三者になります。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| 株主割当 | 既存株主全員に持株数に応じて新株引受権を与える |
| 第三者割当 | 特定の者を選んで新株を割り当てる |
例えば、A・B・Cの3名が株主である会社が、Aだけに新株を100株割り当てる場合、Aは既存株主ですが第三者割当になります。一方で、A・B・C全員に持株割合に応じて平等に引受機会を与える場合は株主割当です。
令和2年度司法書士試験で問われた判断ポイント
商業登記記述では、単純に「誰が株式を取得するのか」だけを見ると判断を誤ります。見るべきポイントは、募集事項の決定と引受人の募集方法です。
問題文に「既存株主である者に株式を割り当てる」と書かれていても、それだけで株主割当と判断してはいけません。
例えば、取締役会や株主総会の決議によって特定の株主を引受人として指定している場合、その者は既存株主であっても第三者割当の対象者となります。
商業登記記述で募集株式を判断する手順
募集株式の発行が出題された場合は、以下の順番で確認すると整理しやすくなります。
- 誰に株式を割り当てるのか確認する
- 既存株主全員に引受機会が与えられているか確認する
- 特定の者だけが引受人になっていないか確認する
- 必要な機関決定や登記事項を確認する
特に重要なのは、「引受人が株主かどうか」ではなく、「株主割当の制度を利用しているか」です。
例えば、会社の大株主である人物に新株を発行するケースでも、他の株主に同じ条件で引受機会が与えられていなければ第三者割当として処理します。
既存株主への割当=株主割当ではない理由
日常的な感覚では、「株主に株式を渡すなら株主割当」と考えてしまいます。しかし、会社法上の分類は言葉の印象ではなく、手続きによって決まります。
株主割当は、既存株主の地位に基づいて公平に新株取得の機会を与える制度です。そのため、一部の株主だけを選んで発行する場合は、たとえ株主であっても株主割当ではありません。
この点を理解すると、第三者割当という言葉に惑わされず、問題文から正確に判断できるようになります。
まとめ
募集株式の発行における第三者割当は、「現在株主ではない人に株式を渡す」という意味ではありません。既存株主であっても、特定の者を選んで株式を割り当てる場合は第三者割当になります。
司法書士試験の商業登記記述では、「誰に割り当てたか」だけではなく、「既存株主全員に引受機会を与える株主割当の手続きを取ったか」を確認することが重要です。
募集株式の問題では、第三者という言葉のイメージに引っ張られず、会社法上の手続きの違いを見ることで正確に解答できるようになります。


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