簿記3級の学習で多くの人が混乱しやすい項目の一つが、株式を発行したときの仕訳です。「普通預金という資産が増えて、さらに資本金という資本も増えるなら、会社が二重に得をしているのではないか」と疑問に感じる人は少なくありません。
しかし、この仕訳は会社のお金の流れと、そのお金がどこから来たものなのかを分けて考えることで理解できます。この記事では、株式発行時の仕訳の意味や、建物購入時との違いについて簿記3級レベルで分かりやすく解説します。
株式を発行したときの仕訳はなぜ資本金が増えるのか
会社が株式を発行して投資家からお金を集める場合、そのお金は会社が借りたものではありません。返済する必要がない、会社の元手となる資金です。
例えば、会社が株式を発行し、投資家から10,000円を受け取って普通預金に入金された場合、仕訳は以下のようになります。
借方:普通預金 10,000円
貸方:資本金 10,000円
この仕訳は「会社のお金が10,000円増えた」という事実と、「そのお金は株主から出資された会社の財産である」という理由を同時に記録しています。
普通預金と資本金が増えても二重に得をしているわけではない理由
簿記では、資産と資本は同じものを表しているわけではありません。普通預金は会社が持っている財産の種類を表し、資本金はその財産がどのように集められたかを表しています。
例えば、財布に10,000円入っている場合、「財布の中に10,000円ある」という情報と、「その10,000円は自分のお金である」という情報は別の内容です。
会社の場合も同じで、普通預金という資産が増えた一方で、その資産の出どころとして資本金が増えています。そのため、会社の利益が二重に増えているわけではありません。
簿記の基本ルール「資産=負債+純資産」で考える
株式発行の仕訳を理解するには、簿記の基本となる貸借対照表の関係を知ることが重要です。
会社の財産は、以下の式で表されます。
資産=負債+純資産
株式発行の場合、普通預金という資産が10,000円増加します。そして、その資金の調達方法は借金ではなく株主からの出資なので、純資産に含まれる資本金が10,000円増加します。
つまり、左側の資産と右側の純資産が同時に増えることで、会社の財産状況を正しく表しているのです。
建物を購入したときに資本金が増えない理由
株式発行と建物購入が混同されやすい理由は、どちらも会社の資産が増える取引だからです。しかし、お金を得た理由が異なります。
例えば、現金10,000円で建物を購入した場合、仕訳は以下のようになります。
借方:建物 10,000円
貸方:現金 10,000円
この場合、会社の資産の種類が現金から建物に変わっただけです。資産全体の金額は増えていないため、資本金が増えることはありません。
一方で株式発行の場合は、会社の外部から新しい資金が入ってきます。そのため、資産の増加と同時に、その資金の出どころである資本金も記録する必要があります。
株式発行と借入金の違いを理解すると仕訳が簡単になる
株式発行と似た取引として、銀行からお金を借りる場合があります。例えば、銀行から10,000円を借りて普通預金に入金された場合は、以下の仕訳になります。
借方:普通預金 10,000円
貸方:借入金 10,000円
この場合も普通預金という資産は増えますが、貸方は資本金ではなく借入金になります。なぜなら、銀行から借りたお金は将来返済する義務があるためです。
つまり、資産が増えたときは「なぜ増えたのか」を考えることが仕訳を理解するポイントです。出資によるものなら資本金、借入によるものなら借入金になります。
まとめ|株式発行の仕訳はお金の量と出どころを記録している
簿記3級で株式発行の仕訳を理解するには、「普通預金」と「資本金」は別の意味を持つ項目だと考えることが大切です。
普通預金は会社が現在持っている財産を表し、資本金はその財産が株主から出資されたものであることを表しています。そのため、両方が増えても二重に利益を得ているわけではありません。
仕訳で迷った場合は、「何が増えたのか」だけではなく、「その増えたものはどこから来たのか」を考えると、株式発行や借入、購入などの取引を正しく判断できるようになります。


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