株式交換によって法的な親会社と子会社が決まったとしても、会計上は必ずしもその関係が取得企業・被取得企業として扱われるとは限りません。その代表例が「逆取得」です。逆取得の学習では、個別財務諸表ではA社がB社株式を取得した処理を行う一方で、連結財務諸表ではB社がA社を取得したものとして処理するため、多くの学習者が混乱します。本記事では、なぜ個別財務諸表の処理がそのまま連結財務諸表に反映されないのかを解説します。
逆取得とは何か
逆取得とは、法的にはA社が親会社となるものの、実質的にはB社の株主が支配権を獲得しているため、会計上はB社が取得企業と判断されるケースです。
例えば、B社の既存株主が株式交換後に議決権の過半数を保有する場合、法的にはA社が親会社でも、経済的実態としてはB社がA社を支配していると考えられます。
企業結合会計では、このような場合に形式よりも実態を重視するため、連結財務諸表ではB社を取得企業として処理します。
個別財務諸表ではなぜA社が取得企業になるのか
個別財務諸表は法的な取引を記録する財務諸表です。
株式交換では法的親会社であるA社が自己株式を交付し、B社株式を取得します。そのためA社の個別財務諸表では「B社株式の取得」として処理されます。
つまり個別財務諸表では支配関係の実態ではなく、法的に誰が何を取得したかという事実が重視されます。
| 財務諸表 | 重視するもの |
|---|---|
| 個別財務諸表 | 法的形式 |
| 連結財務諸表 | 経済的実態 |
連結財務諸表ではなぜB社がA社を取得したことになるのか
連結財務諸表の目的は、企業グループ全体を一つの経済主体として表現することです。
そのため、企業結合の実態が重要になります。逆取得ではB社の株主が結合後の支配権を持つため、会計上はB社が取得企業と判断されます。
結果として、連結財務諸表では「B社がA社を取得した」という前提で取得原価の配分やのれんの計算を行います。
連結会計では法的形式より支配の実態が優先されることが最大のポイントです。
個別財務諸表の処理は本当に無視されているのか
テキストを読むと、個別財務諸表の処理が全く関係なく見えることがあります。しかし実際には無視されているわけではありません。
連結財務諸表は確かに個別財務諸表を基礎として作成されます。しかし連結修正仕訳によって、グループ全体の経済的実態を表すように修正されます。
逆取得の場合は、この修正が非常に大きいため、説明の便宜上「B社がA社を取得したものとして考える」と最初から説明されることが多いのです。
つまり実務上は個別財務諸表を出発点にしていますが、連結上の修正結果があまりにも大きいため、学習段階では直接B社取得として理解した方が分かりやすいということです。
具体例で考える逆取得
例えばA社が上場会社でB社が非上場会社だとします。
株式交換後にB社の旧株主が結合後企業の80%を保有する場合、法的にはA社が親会社ですが、実質的にはB社の株主が支配しています。
この場合、個別財務諸表ではA社がB社株式を取得した処理を行います。
しかし連結財務諸表では、B社がA社を買収して上場会社の地位を得たと考える方が経済的実態に近いため、その前提で会計処理が行われます。
まとめ
逆取得で混乱しやすい理由は、個別財務諸表と連結財務諸表で重視する視点が異なるためです。
個別財務諸表は法的形式に基づきA社がB社株式を取得した処理を行います。一方、連結財務諸表は経済的実態を重視するため、B社が取得企業として扱われます。
連結財務諸表は個別財務諸表を基礎に作成されますが、逆取得では連結修正によって実態ベースの姿へ大きく組み替えられます。そのため学習上は最初から「B社がA社を取得した」と説明されることが多いのです。


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