簿記や会計を学んでいると、税効果会計の「繰延税金資産の回収可能性」という論点で混乱する人は少なくありません。特に、将来回収できると見込んで計上していた繰延税金資産が、業績悪化によって回収不能と判断された場合、「なぜ費用が増えるのか」「法人税より調整額が大きくなることはあるのか」と疑問を持つ人も多いです。この記事では、繰延税金資産の取り崩しと法人税等調整額の関係、損益計算書での表示方法について具体例を交えながら解説します。
繰延税金資産とは何か
繰延税金資産とは、将来の税金を減らせる効果を資産として計上したものです。
例えば、将来の損金算入が見込まれる一時差異や繰越欠損金などについて、「将来利益が出れば税金を減らせる」と考え、その税効果分を資産計上します。
ただし、将来利益が出なければ税金を減らせません。
そのため、将来回収できる可能性(回収可能性)が前提になります。
回収可能性がなくなった場合はどうなる?
業績悪化などにより、「将来利益が出そうにない」と判断された場合、繰延税金資産は取り崩されます。
その際の仕訳は一般的に以下のようになります。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 法人税等調整額 | 繰延税金資産 |
つまり、以前は「将来税金が減る」と考えて資産計上していたものを、「もう減らせなさそうだから取り消す」という処理です。
このため、法人税等調整額が費用として増加します。
法人税等調整額が法人税額を超えることはある?
結論から言うと、あります。
税効果会計では、実際の納税額だけでなく、将来の税効果の変動も損益計算書に反映されます。
そのため、法人税等調整額が大きくなると、法人税等の合計が実際の法人税を大きく超えることがあります。
例えば以下のケースです。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 税引前当期純利益 | 100万円 |
| 法人税等 | 5万円 |
| 法人税等調整額 | 30万円 |
| 当期純利益 | 65万円 |
この場合、法人税等合計は35万円になります。
つまり、実際に納付する税額5万円に加えて、「過去に計上していた税効果資産の取り崩し」が費用化されている状態です。
質問例の計算で注意したい点
質問例では当期純利益が75万円となっていますが、計算上は以下になります。
| 計算式 | 金額 |
|---|---|
| 税引前当期純利益 | 100万円 |
| 法人税等 | ▲5万円 |
| 法人税等調整額 | ▲30万円 |
| 当期純利益 | 65万円 |
法人税等調整額は費用なので、利益から控除されます。
損益計算書ではどこに表示される?
損益計算書では通常、
- 法人税、住民税及び事業税
- 法人税等調整額
が別表示されます。
つまり、法人税等調整額は営業外費用ではなく、「税金関連項目」として税引前当期純利益の下に表示されます。
イメージとしては以下のようになります。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 税引前当期純利益 | 100万円 |
| 法人税、住民税及び事業税 | 5万円 |
| 法人税等調整額 | 30万円 |
| 当期純利益 | 65万円 |
なぜ税金以上の費用が発生するのか
税効果会計では、「今期の納税額」だけでなく、「将来減税できる見込み」も含めて利益計算を行います。
そのため、過去に見込んでいた将来減税効果が消滅すると、その分を費用として一気に認識することがあります。
これは現金支出ではなく、あくまで会計上の見積変更に近い側面があります。
業績悪化時に法人税等調整額が大きくなるケース
特に以下のような場合、法人税等調整額が大きく計上されることがあります。
- 赤字転落
- 将来利益予測の下方修正
- 事業撤退
- 繰越欠損金の回収可能性低下
上場企業の決算でも、「繰延税金資産の取り崩しにより最終赤字拡大」と説明されることがあります。
まとめ
税効果会計では、将来回収可能と判断していた繰延税金資産について、回収可能性がなくなった場合には取り崩しを行います。
その際、「法人税等調整額/繰延税金資産」という仕訳が発生し、法人税等調整額が費用として計上されます。
このため、実際の法人税額より法人税等調整額の方が大きくなり、法人税等合計が大幅に増加することもあります。
損益計算書上では、法人税等調整額は営業外費用ではなく、税引前当期純利益の下に「法人税等関連項目」として表示されるのが一般的です。


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