社員との話し合いの中で、会社側が「辞めたいなら止めない」「他へ行ってもらって構わない」と発言した場合、それが退職勧奨に当たるのか悩むケースがあります。特に、その後に従業員側が「会社都合退職だ」「退職金を払え」と主張してきた場合、会社としてどう対応すべきか不安になる中小企業も少なくありません。
退職勧奨と自己都合退職は似ているようで法的な意味が異なり、退職金の扱いや離職票の区分にも影響する可能性があります。この記事では、退職勧奨の基本や、会社都合退職との違い、退職金請求の考え方について分かりやすく解説します。
退職勧奨とは何か
退職勧奨とは、会社側が従業員に対して「退職してほしい」と働きかけ、退職を促す行為を指します。
ただし、退職勧奨は即違法というわけではなく、双方の合意によって成立するケースもあります。
一方で、次のようなケースでは「単なる会話」や「従業員側の退職希望への応答」と判断される場合もあります。
- 従業員側から先に辞めたいと騒いでいた
- 会社側が引き止めを試みていた
- 感情的なやり取りの流れで発言した
- 会社側から継続的に退職要求していない
「辞めたいなら止めない」という一言だけで直ちに退職勧奨と断定されるわけではありません。
特に、従業員側が先に「こんな会社辞める」などと強く主張していた場合、その流れの中での発言かどうかも重要になります。
自己都合退職と会社都合退職の違い
会社都合退職になるかどうかは、実際には離職理由や経緯を踏まえてハローワーク等が判断します。
| 区分 | 特徴 |
|---|---|
| 自己都合退職 | 本人の意思で退職する |
| 会社都合退職 | 解雇・退職勧奨など会社主導 |
| 合意退職 | 双方合意で退職する |
例えば、会社側が何度も「辞めてほしい」と迫ったり、配置転換や嫌がらせで退職へ追い込んだ場合は、退職勧奨や会社都合と判断される可能性があります。
しかし、従業員側が自ら辞表を提出し、自分で退職日を決めている場合、一般的には自己都合退職と扱われるケースも多くあります。
実際の判断では、録音・メール・議事内容など、経緯全体が重視されます。
辞表提出後の「退職日は15日後」は有効なのか
退職届や辞表に「15日後退職」と記載されている場合、その扱いも気になるポイントです。
民法上、期間の定めのない雇用契約では、原則として退職意思表示から2週間で退職できるという考え方があります。
そのため、法律上は15日後退職の主張自体が完全に無効とは限りません。
ただし、会社の就業規則で「1か月前までに申し出ること」などの規定がある場合、実務上は引継ぎや調整を求めるケースもあります。
もっとも、最終的には会社側が退職届を受理するか、双方で調整するかによって運用が変わることもあります。
退職金は必ず支払わなければならない?
退職金について誤解されやすいですが、法律上、全ての会社に退職金制度が義務付けられているわけではありません。
つまり、就業規則や退職金規程に「支給する」と定めがなければ、原則として会社は退職金を支払う義務を負わないケースが一般的です。
例えば、次のようなケースです。
- 退職金制度そのものがない
- 勤続年数条件を満たしていない
- 対象職種外である
一方で、会社都合退職や退職勧奨の際に、解決金や特別退職金として「給与数か月分」を提示する事例は存在します。
ただし、これはあくまで双方交渉の中で合意されるケースが多く、必ず支払義務が発生するものではありません。
「給料3〜6か月分」という数字も、法定ルールではなく、個別交渉や裁判例などで出てくることがある水準です。
会社が取るべき実務対応
従業員との退職トラブルでは、感情論ではなく、経緯を整理して対応することが重要です。
例えば、以下のような記録は重要になります。
- 話し合い内容のメモ
- メールやLINE
- 辞表の原本
- 就業規則
- 退職金規程
特に、「従業員側から退職を強く主張していた」という経緯がある場合、その事実関係は重要な判断材料になる可能性があります。
また、離職票の離職理由について争いになりそうな場合は、社会保険労務士や弁護士へ早めに相談する企業も少なくありません。
厚生労働省でも、労働契約や退職に関する情報提供を行っています。
まとめ
「辞めたいなら止めない」という発言だけで、直ちに退職勧奨や会社都合退職になるとは限りません。特に、従業員側が先に退職意思を強く示していた場合、全体の経緯が重視されます。
また、退職金についても、就業規則や退職金制度の有無が重要であり、制度が存在しない場合は当然に支払義務が発生するわけではありません。
退職トラブルでは、感情的な主張よりも、会話経緯や書類、就業規則など客観的資料が重要になります。会社側・従業員側双方とも、冷静に事実を整理しながら対応することが大切です。


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