ビルメンテナンス業界では、「365日1名常駐」という案件は珍しくありません。しかし実務では、1人常駐と書かれていても、実際には複数人で回さなければ成立しないケースがほとんどです。
特に中小企業では、「直接労務費をいくらで見積もるべきか」「休日・有給・代務をどう吸収するか」で悩む担当者も多いでしょう。
この記事では、365日常駐案件における人件費の考え方や、実際の見積作成で検討されるポイントを整理して解説します。
365日常駐は「1人配置」では成立しにくい
まず前提として、365日毎日誰かを配置する契約は、実質的には複数人体制が必要です。
例えば年間365日を1日8時間勤務で回す場合、1人の年間労働日数だけでは足りません。
| 項目 | 概算 |
|---|---|
| 年間必要日数 | 365日 |
| 1人の年間実働 | 約220〜240日程度 |
| 不足分 | 約120〜140日 |
有給休暇、休日、体調不良、研修などを考慮すると、最低でも1.5人〜2人分の人件費発想が必要になります。
つまり「現場には1人」でも、「会社としては複数人で維持する契約」になるのです。
直接労務費を単純な日額だけで考えると赤字化しやすい
例えば1日24,000円で365日契約した場合、年間売上は以下になります。
24,000円 × 365日 = 876万円
一見すると高額に見えますが、ここから実際には以下のコストが発生します。
- 給与
- 法定福利費
- 交通費
- 有給休暇
- 資格手当
- 代務要員
- 教育費
- 管理費
さらに資格者限定現場の場合、単純なアルバイト補充が難しく、人件費が固定化しやすい特徴があります。
そのため、「24,000円だから1人日24,000円で回せる」という考え方は危険な場合があります。
実際の現場では1.3〜1.6倍程度で考える会社も多い
実務上は、直接労務費に“余剰日数”や“バックアップ体制”を織り込む会社も少なくありません。
例えば以下のような考え方です。
- 24,000円 × 1.3倍
- 24,000円 × 1.5倍
- 代務費込み単価で再計算
これは「実際に現場へ毎日入る人の人数」ではなく、「会社として現場維持に必要な総コスト」で考えているためです。
特に小規模会社では、代務対応がそのまま本社業務や他現場に影響するため、“余剰人員コスト”を見積へ入れないと利益が消えやすくなります。
大手と中小で考え方が違う理由
人数の多い会社は、複数現場で人員を融通できる強みがあります。
例えば巡回現場スタッフや待機要員を組み合わせることで、常駐コストを薄められる場合があります。
一方、中小企業では以下の問題が起きやすくなります。
- 代務できる人が少ない
- 資格者が限られる
- 他現場へ影響が出る
- 管理者が現場に出る
そのため、中小ほど「直接労務費を高めに設定する必要性」が出やすいのです。
「余った出勤日で他現場利益を出す」はリスクもある
実務では、「余剰日を他現場で使えばよい」という考え方もあります。
しかし、この方法には不安定要素があります。
- 他現場の仕事量が保証されない
- 急な欠員対応が増える
- 資格現場だと配置制限がある
- 人員疲弊が起きやすい
特に最近は人手不足が深刻化しており、「余った人材を他で利益化する前提」が崩れるケースも増えています。
そのため、最初から現場単体で一定利益が出る設計にする会社も増えています。
見積作成時に意識されるポイント
365日常駐案件では、単純な日額ではなく、「年間維持コスト」で考えることが重要です。
例えば以下を事前に整理しておくと、赤字リスクを減らしやすくなります。
- 必要資格数
- 代務頻度
- 有給取得率
- 休日数
- 夜勤有無
- 教育期間
- 緊急呼出対応
また、顧客側が「1人配置だから1人工」と考えている場合でも、実際の維持体制を説明することで単価交渉が通るケースもあります。
まとめ
365日常駐案件は、表面的には「1人配置」でも、実務上は複数人で支える契約になることがほとんどです。
そのため、直接労務費を単純な1人工だけで考えると、休日・有給・代務対応で赤字化しやすくなります。
特に中小ビルメン会社では、人員融通の難しさから、1.3〜1.5倍程度の補正を入れて考えるケースも珍しくありません。
重要なのは、「現場に何人いるか」ではなく、「会社として365日維持するために必要な総コスト」で見積を組み立てることです。


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