株式会社の役員変更登記を自分で進めていると、法務局の記載例や必要書類一覧の中に、急に難しい表現が出てきて戸惑うことがあります。
特に、一人会社や取締役会非設置会社の重任登記でよく疑問になるのが、「定款、株主総会議事録又は監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがあることを証する書面」という記載です。
「そもそも監査役を置いていないのに必要なのか?」「何を提出する書類なのか?」と混乱しやすい部分でもあります。
この記事では、この書類が何を意味しているのか、一人会社では必要なのか、どんな会社が対象なのかをわかりやすく解説します。
まず結論:監査役がいない会社なら通常は不要
取締役会・監査役非設置会社で、代表取締役1名のみの一人会社であれば、この書類は通常不要です。
なぜなら、この書類は「監査役を置いている会社」に関係するものだからです。
監査役そのものが存在しない会社なら、監査範囲を証明する必要もありません。
この書類はどんな会社で必要になるのか
この書類が必要になるのは、主に以下のような会社です。
- 監査役設置会社
- ただし監査役の権限を会計監査だけに限定している会社
つまり、「監査役はいるけれど、業務監査まではしていない」という会社です。
会社法上の背景
通常の監査役は、取締役の業務全般を監査します。
しかし非公開会社では、定款によって「会計に関する監査だけ」に限定できる制度があります。
その場合、法務局は「本当に監査範囲が限定されている会社なのか」を確認する必要があるため、その証明書類を求めています。
「証する書面」とは具体的に何か
法務局が求めている「証する書面」は、以下のいずれかです。
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 定款 | 監査役の権限限定条項が記載されている |
| 株主総会議事録 | 定款変更を決議した記録 |
| その他証明書面 | 法務局が確認できる資料 |
つまり、「監査役の監査範囲を会計に限定している」という事実を示せればよいという意味です。
なぜ法務局のPDFに載っているのか
法務局の記載例は、複数パターンをまとめて掲載していることが多いため、自社に不要な書類まで一覧に含まれているケースがあります。
そのため、一人会社の申請者が見ると、「これ全部必要なの?」と感じやすいです。
特に商業登記は文章が非常に長く、条件分岐も多いため、自社がどのパターンに該当するかを整理することが大切です。
一人会社でよくある勘違い
一人会社では、以下のような誤解が起きやすいです。
- 法務局PDFの書類は全部必要と思ってしまう
- 監査役がいなくても監査関連書類が必要と思う
- 定款全部を毎回提出しないといけないと思う
しかし実際には、会社の機関設計によって必要書類はかなり変わります。
例えばこんなケース
以下のような会社なら、この書類は通常不要です。
- 株主1人
- 取締役1人
- 監査役なし
- 取締役会なし
この場合、重任登記で必要になるのは主に以下です。
- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 登記申請書
比較的シンプルな構成になります。
逆に必要になるケース
一方、以下のような会社では必要になる可能性があります。
- 監査役を置いている
- 定款で監査権限を会計限定にしている
- その内容が登記簿だけでは確認できない
この場合は、定款コピーなどを添付して法務局へ示します。
定款を見れば確認できる
自社が該当するか不安な場合は、まず定款を確認すると判断しやすいです。
例えば以下のような文言があれば、会計限定監査役の会社です。
「監査役の監査の範囲は会計に関するものに限定する」
逆に、そもそも監査役に関する条項がないなら、通常は気にしなくて大丈夫です。
まとめ
「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがあることを証する書面」とは、会計限定監査役を置いている会社が、その事実を法務局へ示すための書類です。
一方で、取締役会・監査役非設置会社の一人会社であれば、通常は不要です。
法務局の記載例には複数パターンがまとめて掲載されているため、自社に不要な添付書類まで含まれていることがあります。
まずは「自社に監査役がいるか」を確認すると、かなり整理しやすくなります。


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