日立は本当に開発力がないのか?大企業のシステム開発失敗が起こる理由とSIerの課題を解説

企業と経営

日立製作所のような日本を代表する大企業が、大規模なシステム開発やプロジェクトで問題を起こすニュースを見ると、「技術力が低いのではないか」「開発力がないのではないか」と感じる人もいます。

しかし、大規模ITプロジェクトの失敗は、単純に企業の技術力だけで説明できるものではありません。世界的なIT企業や優秀なエンジニアを抱える企業でも、大規模システム開発では多くのリスクがあります。この記事では、大企業の開発失敗が起こる背景や、SIerというビジネスモデルの特徴について解説します。

日立のような大企業でもシステム開発が失敗する理由

日立製作所は、ITサービスだけでなく、鉄道、エネルギー、製造、社会インフラなど幅広い分野で事業を展開する総合電機メーカーです。そのため、扱うシステムも企業内部だけで使う小規模なものではなく、社会基盤に関わる非常に大きなものが多くあります。

大規模システムでは、関係者の数が数千人規模になることもあります。発注企業、利用部門、開発会社、協力会社など、多くの組織が関わるため、技術的な問題だけではなく、意思決定やコミュニケーションの問題も発生しやすくなります。

例えば銀行の基幹システムや行政システムでは、単純に新しいプログラムを書けば終わりではありません。既存システムとの連携、法律への対応、セキュリティ対策、利用者教育など、多くの条件を満たす必要があります。

開発失敗は技術力不足だけが原因ではない

システム開発の失敗原因として多いのは、プログラムを書く能力そのものよりも、要件定義やプロジェクト管理に関する問題です。

要件定義とは、「顧客が本当に必要としている機能や仕組みを明確にする作業」です。しかし、利用者側も自分たちの業務を完全に整理できていない場合があり、開発途中で「やっぱりこうしたい」という変更が発生することがあります。

例えば、会社が新しい販売管理システムを作る場合、営業部門は営業の視点、経理部門は会計の視点、経営者はコストや利益の視点で要望を出します。それらを整理して一つのシステムに落とし込むことは非常に難しい作業です。

SIerは本当にシステム開発を経験していない人ばかりなのか

SIerに対して、「実際にコードを書いた経験が少ない人が上流工程を担当している」という批判が出ることがあります。確かに、大手SIerでは若手時代にプログラミングを経験した後、プロジェクト管理や顧客折衝を中心にキャリアを進める人も多くいます。

ただし、これは必ずしも能力不足を意味するわけではありません。大規模開発では、個人が高度なプログラムを書く能力だけではなく、数百人以上の開発者をまとめ、品質や納期を管理する能力も重要になります。

一方で、現場経験が不足したまま顧客の業務や技術的な制約を十分理解できない状態で要件を決めてしまうと、後工程で問題が発生することがあります。この点はSI業界全体で長年議論されている課題です。

大企業ほどシステム開発が難しくなる理由

大企業のプロジェクトでは、規模が大きいほど調整コストが増えます。小さな会社なら経営者と開発担当者が直接話して仕様変更できますが、大企業では複数部署の承認や調整が必要になります。

また、既存システムが長年使われている場合、古い技術や複雑なデータ構造が残っていることがあります。新しいシステムを作る場合でも、過去の資産との互換性を維持しなければならず、単純な新規開発より難易度が高くなります。

例えば数十年前に作られた業務システムを最新技術へ移行する場合、古い仕様書が不足していたり、当時の担当者しか理解していない処理が存在したりすることがあります。

優秀な企業でも失敗するプロジェクト管理の難しさ

ITプロジェクトでは、「技術的に可能か」と「ビジネスとして成功できるか」は別問題です。

優秀なエンジニアがいても、予算設定が現実的でなかったり、スケジュールが厳しすぎたり、発注側と開発側の認識がずれていたりすると失敗する可能性があります。

そのため、世界的なIT企業や大手SIerでも、大規模案件ではトラブルが発生します。これは開発力がないというより、大規模システム開発そのものが非常に難しい仕事であることを示しています。

まとめ

日立のような大企業でシステム開発の問題が発生したとしても、それだけで「開発力がない」と判断することはできません。

大規模ITプロジェクトでは、技術力だけでなく、要件定義、組織間調整、プロジェクト管理、既存システムとの調整など、多くの要素が成功を左右します。

SIerにも改善すべき課題はありますが、社会インフラを支えるような巨大システムを安全に作り上げる仕事は非常に難易度が高く、優秀な企業でも失敗することがある分野だと理解することが重要です。

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