簿記や会計を学んでいると、「法定福利費」と「社会保険料預り金」という似たような意味に見える勘定科目が登場します。特に社会保険料に関する仕訳では、どちらも同じような金額が出てくるため混乱しやすい部分です。この記事では、法定福利費と社会保険料預り金の違い、会社負担分と従業員負担分の考え方、具体的な仕訳例について解説します。
法定福利費とは会社が負担する社会保険料のこと
法定福利費とは、法律によって会社が負担することを義務付けられている福利厚生費用のことです。代表的なものには健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料、雇用保険料、労災保険料などがあります。
社会保険料は会社と従業員がそれぞれ負担する仕組みになっていますが、そのうち会社が負担する部分を経費として処理するときに使用する勘定科目が「法定福利費」です。
つまり、質問でいう「法定福利費(会社の負担する分)」という理解は基本的に正しいです。ただし、法定福利費は会社負担分を処理するための勘定科目であり、従業員負担分を表す科目ではありません。
社会保険料預り金とは従業員負担分を一時的に預かる科目
社会保険料預り金とは、会社が従業員の給与から天引きした社会保険料を、一時的に預かっている状態を表す勘定科目です。
健康保険料や厚生年金保険料などは、従業員本人が負担する分があります。しかし、従業員が直接保険料を支払うのではなく、会社が給与から控除してまとめて納付します。
そのため、会社から見ると従業員負担分は会社の費用ではなく、一時的に預かっているお金になります。この預かっている状態を記録するために「社会保険料預り金」という負債の勘定科目を使います。
法定福利費と社会保険料預り金の違い
両者の違いを簡単に整理すると、誰が負担するお金なのかという点が重要になります。
| 勘定科目 | 意味 | 負担者 |
|---|---|---|
| 法定福利費 | 会社が負担する社会保険料 | 会社 |
| 社会保険料預り金 | 従業員から預かった社会保険料 | 従業員 |
つまり、「法定福利費=会社負担分」「社会保険料預り金=従業員負担分」というイメージで覚えると理解しやすくなります。
ただし、社会保険料全体を法定福利費として処理するわけではありません。会社が実際に負担する部分だけが法定福利費になります。
社会保険料を支払うときの仕訳例
例えば、従業員の給与から控除する社会保険料が3万円、会社負担分が3万円だった場合を考えます。
まず給与支払い時には、従業員負担分を預かったことを記録します。
給与支払い時の仕訳例
(借方)給与 300,000円
(貸方)普通預金 270,000円
(貸方)社会保険料預り金 30,000円
この時点では、会社は従業員から3万円を預かっているだけなので、費用にはなりません。
次に会社負担分を計上します。
会社負担分計上の仕訳例
(借方)法定福利費 30,000円
(貸方)未払費用など 30,000円
そして、会社負担分と従業員から預かった分を合わせて社会保険料を納付します。
納付時の仕訳例
(借方)社会保険料預り金 30,000円
(借方)未払費用 30,000円
(貸方)普通預金 60,000円
なぜ会社負担分と従業員負担分を分ける必要があるのか
社会保険料は会社と従業員が一緒に負担するため、会計上も分けて管理する必要があります。
もし従業員負担分まで法定福利費として処理すると、本来は会社が負担していない費用を会社の経費として計上することになってしまいます。
例えば、従業員から給与天引きした健康保険料を会社の費用にしてしまうと、会社の利益計算が正しく行えなくなります。そのため、預り金として管理することが重要です。
簿記試験で間違えないための覚え方
簿記の試験では、社会保険料に関する仕訳問題がよく出題されます。覚えるポイントは「会社のお金なのか、預かっているだけのお金なのか」です。
- 会社が負担する社会保険料 → 法定福利費(費用)
- 従業員から天引きした社会保険料 → 社会保険料預り金(負債)
「福利厚生に関する費用だから全部法定福利費」と考えると間違いやすいため、誰が負担する部分なのかを確認する習慣をつけることが大切です。
まとめ
法定福利費と社会保険料預り金は、どちらも社会保険料に関係する勘定科目ですが、意味は異なります。
法定福利費は会社が負担する社会保険料を処理する費用科目であり、社会保険料預り金は従業員負担分を給与から預かったことを示す負債科目です。
「法定福利費=会社負担分」「社会保険料預り金=従業員負担分」と整理すると、簿記の仕訳問題でも判断しやすくなります。

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