歯科医院の経営において、スタッフのベースアップ原資をどう計算するかは非常に重要なテーマです。提示された2つの計算式のどちらが正しいのか、また違いは何なのかを整理すると、実務でも理解しやすくなります。本記事では、複雑に見える賃上げ計算の考え方をシンプルに解説します。
まず結論:どちらも「目的が違うため一概に正誤はない」
結論から言うと、提示された2つの式は「どちらかが絶対に正しい」というものではありません。
なぜなら、片方は“総支給ベースの試算”、もう片方は“社会保険料などを考慮した実質ベース”だからです。
つまり、どの段階の利益や原資を見ているかで意味が変わります。
① 社会保険料を考慮しないシンプルな計算式
(初診×21×10+再診×4×10+往診×66×10)÷スタッフ人数
この式は、診療報酬から単純に一定係数を掛けて「人件費原資」を出す考え方です。
わかりやすい反面、社会保険料や事業主負担分は考慮されていません。
② 0.835を掛ける計算式の意味
(初診×21×10+再診×4×10+往診×66×10)×0.835÷スタッフ人数
この0.835は、一般的に「法定福利費(約16.5%)」を差し引いた実質比率を意味しています。
つまり、給与として自由に使える金額ではなく、社会保険料などの企業負担を差し引いた“手残りベース”です。
どちらを使うべきかは「目的次第」
もし「理論上の売上からどれだけ賃上げ原資があるか」を見るなら①の式が使われます。
一方で「実際に給与として配分できる現実的な金額」を知りたいなら②の式が適しています。
経営判断では②のような実質ベースで考えることが一般的です。
よくある誤解と注意点
よくある誤解は「売上=そのまま給与に回せる」という考え方です。
実際には社会保険料、固定費、設備投資なども必要なため、単純な売上比例では判断できません。
また、医院ごとに人件費率の設計が異なるため、固定の正解式は存在しません。
まとめ
2つの計算式はどちらが正しい・間違いというものではなく、見ている「視点」が違うだけです。
シンプルな試算か、実質的な手取り原資かによって使い分ける必要があります。
経営判断では、より現実に近い②の考え方が参考になるケースが多いです。


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