新規参入した競合店を排除する目的で、既存店が一時的に大幅な値下げを行い、競合が撤退した後に価格を元に戻す。このような行為は一見すると巧妙な経営戦略に見えますが、法的・経済的な観点から見ると多くの問題を含んでいます。本記事では、この手法が許されるのか、また現実にはなぜ頻繁に行われないのかを整理して解説します。
極端な値下げは違法になる可能性がある
結論から言うと、この手法は条件次第で違法になります。日本では独占禁止法により、「不当廉売」と呼ばれる行為が規制されています。これは、正当な理由なく原価を著しく下回る価格で継続的に販売し、競争相手の事業活動を困難にする行為を指します。
特に、競合店を排除する目的が明確で、価格を戻す意図があらかじめ存在していた場合、公正取引委員会から問題視される可能性があります。短期間であっても、その影響が大きければ違法と判断されるケースもあります。
合法になるケースも存在する
一方で、すべての値下げが違法というわけではありません。在庫処分、期間限定セール、経営合理化によるコスト削減の結果としての値下げなど、正当な理由があれば認められます。
重要なのは「競合排除を主目的としているかどうか」と「原価を継続的に割り込んでいるか」です。これらを満たさない場合、結果として競合が撤退しても直ちに違法とはなりません。
理論上可能でも現実ではリスクが大きい理由
この戦略が現実であまり使われない最大の理由は、既存店側のリスクが非常に高い点にあります。大幅な値下げは自社の利益を大きく削り、資金力がなければ自滅する可能性があります。
また、価格を戻した瞬間に顧客からの信頼を失うリスクもあります。「あの店は都合よく値段を操作する」という印象が定着すると、長期的なブランド価値を損ないます。
競合排除は価格以外の手段が主流
現実の経営では、価格競争よりもサービス品質、立地、独自性、顧客体験などで差別化を図る方が持続可能です。価格だけで勝負すると、後発のさらに安い競合が現れた場合に同じ戦略を繰り返さざるを得なくなります。
そのため、多くの企業は短期的な価格攻撃よりも、長期的な競争優位性を築く戦略を選択します。
まとめ
競合店を潰す目的での極端な値下げは、条件次第で独占禁止法違反となる可能性があります。仮に合法であったとしても、利益悪化、ブランド毀損、法的リスクなどのデメリットが大きく、現実的には非常に危険な戦略です。そのため、多くの企業はこの方法を選ばず、別の競争手段を採用しています。


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