働く職場において「業務」と「私用」の境界があいまいになる場面があります。特に中小企業などで見られがちな、上司や社長が自身の私用を社員に頼む行為。たとえば、自家用車のタイヤ交換を社員にさせるケースが実際にあるようですが、これは果たして正当な指示なのでしょうか?この記事では、そのようなケースがパワーハラスメントに該当するかどうかを中心に、適切な対応策も含めて詳しく解説します。
パワーハラスメントの定義と判断基準
厚生労働省の指針によると、パワーハラスメントは以下の3要件をすべて満たす場合に該当するとされています。
- 優越的な関係に基づく
- 業務の適正な範囲を超える
- 身体的・精神的苦痛を与えるまたは職場環境を悪化させる
つまり、社長という立場から社員に私用を指示し、それが本来の業務ではない内容であり、社員がそれを拒否しにくく精神的負担を感じている場合には、パワハラと見なされる可能性があります。
「自家用車のタイヤ交換」は業務か?
自家用車のタイヤ交換は、会社の業務とは一切関係がない「完全な私用」と言えます。それを社員に毎年のようにやらせているのであれば、指示の正当性は極めて低く、業務命令としての妥当性もありません。
特に、社員が拒否できない雰囲気の中で行われている場合、これは明確に「業務の適正な範囲を超えている」と判断される要素の一つです。
よくある類似例とその判断
パワハラかどうかが議論になる私用の一例を紹介します。
- 社長の自宅の掃除を社員に指示
- 上司の子どもの送迎を頼まれる
- プライベートな買い物を代行させられる
これらはすべて「私用」であり、正当な業務指示とは認められません。タイヤ交換も同様に「業務外」の範疇に入ります。
社員としてできる対処法
もしこのような状況に置かれた場合、次のような対応を検討しましょう。
- 会話内容や指示の証拠(録音・メモ)を残す
- 社内の相談窓口(コンプライアンス・人事)に相談
- 外部機関(労働基準監督署、労働局の総合労働相談コーナー)への相談
可能であれば、複数人で対応することで、個人への圧力を分散するのも有効です。
中小企業で起こりやすい「なあなあ指示」に注意
特に家族経営やアットホームな雰囲気の企業では、私用指示が“慣習”として見過ごされがちです。しかし、法律上のルールは明確であり、たとえ「毎年恒例」だとしても不適切な行為であれば改善されるべきです。
会社の風土に合わせることと、社員としての権利を守ることは別の問題です。業務外の指示に違和感を覚えた場合は、自分の直感を信じて一度立ち止まることが重要です。
まとめ:業務かどうかの判断と勇気ある一歩を
社長の私用を社員にさせる行為は、業務命令の正当性がない限り、パワーハラスメントに該当する可能性があります。特に拒否しづらい状況で続けている場合は、精神的苦痛を伴う恐れもあり、対処を怠らないことが大切です。
「これって業務?」と感じたら、誰かに相談することから始めてください。働きやすい職場環境は、社員が安心して自分の業務に集中できる状態から生まれます。
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