監査論におけるリスクアプローチの「RMM(重要な虚偽表示リスク)」が高い場合に実証手続の範囲を拡大することと、「手続実施上の重要性」の金額を低く設定して実証範囲を広げることは、似たような概念に思えますが、実際には異なる意味を持っています。今回は、これらの2つのアプローチについて、その違いを詳しく解説します。
リスクアプローチにおけるRMM(重要な虚偽表示リスク)
まず、RMM(重要な虚偽表示リスク)とは、監査対象の財務諸表に虚偽表示が含まれているリスクを指します。このリスクが高い場合、監査人は誤った情報を見逃す可能性が高くなるため、監査手続きの範囲を広げる必要があります。具体的には、監査手続きの詳細化やサンプリングの増加などが行われます。
「手続実施上の重要性」の金額設定
次に、監査の実施において「手続実施上の重要性」という概念があります。これは、監査人が財務諸表における重要な取引や残高を識別するために設定する金額基準です。金額を低く設定すると、それに伴い、監査対象とする範囲が広がることになります。つまり、より多くの取引や勘定項目について監査を行うことになります。
範囲拡大と実証手続きの違い
「実証手続の範囲を拡大する」とは、監査人がリスク評価に基づき、監査の具体的な手続きや調査をさらに深掘りして行うことを指します。これに対し、「実証範囲を広げる」とは、手続き上重要な項目を多く見ていくということです。両者は似ているようで、実際にはアプローチの方法に違いがあります。
実際の監査における応用例
例えば、RMMが高い場合、監査人は特定の取引や残高に対して詳細な手続きを行うだけでなく、追加のサンプリングや検証を行います。一方で、手続実施上の重要性を低く設定した場合、金額基準が低くなることで、より広範囲にわたる項目を監査対象としてチェックすることになります。この違いを理解しておくことが、監査の実務において非常に重要です。
まとめ
監査論における「リスクアプローチの範囲拡大」と「実証手続範囲の拡大」は、言葉としては似ているものの、それぞれ異なる監査戦略を指します。リスクアプローチは、リスク評価に基づいて監査手続きを詳細化することを意味し、実証範囲の拡大は、金額基準を設定して監査の範囲を広げることを指します。両者の違いを理解することが、監査の精度向上につながります。