監査論の学習において、「重要性」という言葉の理解は非常に重要です。特に、監査計画の策定やリスクアプローチにおける「重要な虚偽表示リスク」や「重要性の基準値」の議論では、金額だけでなく質的な側面も考慮しなければならない場合があります。今回は、その「重要性」に関する理解を深め、リスクアプローチとの関連について詳しく解説します。
監査計画における「重要性の基準値」の理解
監査計画の策定において、最初に「重要性の基準値」を設定する際、通常は金額面のみを考慮します。これは、監査対象となる企業の財務諸表における誤記載がどの程度であれば、監査人がそれを「重要」と認識するかを示すためです。この基準値を設定することで、監査の範囲やアプローチが決まります。
監査実施の過程における「重要性」の考慮
監査の実施過程においては、金額だけでなく、質的な要因も考慮する必要があります。たとえば、誤った取引の内容が企業の財務状態に与える影響が大きい場合、その金額が基準値以下であっても重要と判断されることがあります。つまり、量と質の両方が監査人の判断に影響を与えるということです。
リスクアプローチにおける「重要な虚偽表示リスク」の理解
リスクアプローチにおける「重要な虚偽表示リスク」とは、監査人が企業の財務諸表における虚偽表示が重大であると認識するリスクを指します。この「重要な」という言葉が金額面だけを指すのか、それとも金額と質両方を含むのかが混乱を招くことがあります。実際には、監査人は金額とともにその虚偽表示が企業の財務状況に与える影響や性質を考慮してリスクを評価します。
「重要性のある取引種類、勘定残高、または注意事項」の取り扱い
監査計画の策定段階で、金額的に小さい取引や勘定残高（例：売掛金）でも、その取引の性質や企業にとっての重要性が質的に高い場合は、監査での検討が必要です。手続実施上の重要性を考慮した後、質的な観点からも再度評価することが求められます。この場合、計画段階で省かれた金額が小さい項目でも、リスクアプローチで再度確認されることがあるのです。
重要性とリスクアプローチの関連性の整理
重要性の概念とリスクアプローチは、監査の過程で密接に関連しています。監査計画段階では金額面での基準値が設定され、実施段階ではその基準を超えて質的要素を考慮することが必要です。また、リスクアプローチにおいても、金額だけでなくそのリスクが企業に与える影響や性質が重要な要素となります。こうした点を整理し、試験に臨むことで、監査論の理解を深めることができるでしょう。
まとめ
監査論における「重要性」とは、金額面だけでなく、その取引や勘定残高が企業の財務状況に与える影響やその性質も考慮する必要があります。リスクアプローチにおいても、重要な虚偽表示リスクの評価は金額と質両方の視点から行われ、手続きにおいて重要性の基準値だけでなく質的な要素も踏まえたアプローチが求められます。
