部分純資産直入法に基づく税効果会計は、評価損や評価益が発生した場合に税務上の影響をどのように処理するかについて慎重に考える必要があります。特に、評価損が発生した場合や、時価と取得原価が一致した場合などにどう対応するべきか、理解を深めていきましょう。本記事では、部分純資産直入法を採用した場合の仕訳や税効果会計の実務的な考え方を解説します。
1. 部分純資産直入法とは?
部分純資産直入法は、企業の資産評価を時価で行い、評価益や評価損を純資産に直接反映させる方法です。この方法を用いることで、税務上と会計上で評価差異をうまく調整することができます。評価益や評価損が発生した場合、その後の税効果の計上方法について理解することが重要です。
評価益が発生した場合、税効果を考慮して、繰延税金資産や繰延税金負債を計上することになります。評価損の場合も、繰延税金資産の計上が必要です。税効果会計を適切に適用することで、税務上と会計上の差異を調整できます。
2. 税効果会計の仕訳例
例えば、取得原価100、前期末時価90、当期末時価100の場合の仕訳を考えてみましょう。当期首の再振替仕訳として、評価損益を調整する必要があります。評価損益の仕訳としては、以下のような処理が行われます。
再振替仕訳: その他有価証券 10 / 投資有価証券評価損益 10
次に、前期末に行った税効果の振替仕訳として、法人税等調整額を繰延税金資産として計上します。
税効果仕訳: 法人税等調整額 4 / 繰延税金資産 4
この仕訳により、取得原価と時価の差異が解消され、税務上と会計上の差異がなくなります。
3. 部分純資産直入法の評価損と税効果
部分純資産直入法において評価損が発生した場合、繰延税金資産(DTA)が発生します。しかし、次期以降に時価が取得原価に戻る場合のみ、DTAとして計上することができます。評価損が発生した年にDTAを計上し、その後時価が取得原価に戻ることで、税金が安くなり繰延税金資産が回収されることになります。
ただし、次期に必ずしも取得原価と時価が一致するとは限らないため、DTAを計上した際には注意が必要です。時価が取得原価を上回った場合、DTAの取り崩しが必要になることもあります。
4. 税金の計上と法人税等の対応
税務上、評価益や評価損が発生した場合、それに対応する法人税等をどのように計上するかが重要です。法人税等の計上額は、会計上の税引前利益や評価損益を基に計算されます。具体的な計上方法として、評価損益に関連する法人税等の調整額を税務上と会計上で一致させることが求められます。
例えば、評価損が発生した場合、その損益に関連する税効果を適切に計上することで、税務上の法人税等と会計上の法人税等が一致するように調整します。
まとめ
部分純資産直入法における税効果会計の仕訳や評価損の取り扱いは、税務上と会計上の調整を的確に行うことが求められます。評価損や評価益が発生した場合には、繰延税金資産や繰延税金負債を適切に計上し、税効果を調整する必要があります。税務上と会計上の差異を理解し、税金の影響を適切に反映させることが、企業の財務健全性を保つために重要です。