簿記の標準原価計算において、固定製造間接費の取り扱いは重要なポイントです。特に、全部標準原価計算と直接標準原価計算の違いについて理解することは、実務での原価計算を正しく行うために欠かせません。この記事では、これらの計算方法における固定製造間接費の取り扱いについて詳しく解説します。
標準原価計算の基本とその役割
標準原価計算は、製造業などで使用される原価計算方法の一つです。この方法は、実際の製造コストを基準にして、基準原価を設定し、その後、実際のコストと比較して差異を分析することで、コスト管理や予算管理を行います。標準原価には、変動費と固定費が含まれ、これらの管理が企業の経営において重要な役割を果たします。
標準原価計算には「全部標準原価計算」と「直接標準原価計算」という2つの主な方法があり、それぞれの方法で固定製造間接費の取り扱いが異なります。
全部標準原価計算と固定製造間接費
全部標準原価計算では、製造にかかるすべての費用を原価標準に加えることが基本です。この方法では、固定製造間接費も基準個数で除して、製品1個あたりの原価標準に加えることが求められます。つまり、固定製造間接費が製品にどのように影響するかを反映させるために、一定の基準で分割して計算します。
例えば、月間の固定製造間接費が100万円であり、基準個数が10,000個の場合、1個あたりの固定製造間接費は100円となります。このように、全体の製造間接費を個別の製品に配分することが、全部標準原価計算の特徴です。
直接標準原価計算と固定製造間接費
一方、直接標準原価計算では、固定製造間接費は原価標準に加えません。直接標準原価計算では、変動費を基にして製造コストを計算し、固定費については特に配分せず、別途管理することが一般的です。
このアプローチでは、製品ごとのコスト計算において、固定製造間接費は直接的に計算に含めず、全体の固定費については経営資源の管理や予算管理のために別途処理されます。そのため、固定製造間接費の配分に関する差異は、基本的に別の方法で管理されることになります。
全部標準原価計算と直接標準原価計算の選択基準
どちらの計算方法を採用するかは、企業の業態や管理目的によって異なります。全部標準原価計算は、製造に関するすべてのコストを一貫して管理できるため、全体的なコスト管理や予算設定が重要な企業に向いています。
一方、直接標準原価計算は、変動費に着目してコスト管理を行う方法です。この方法は、製品の製造にかかる直接的なコストを明確に把握したい場合や、変動費の管理を重視する場合に有効です。
まとめ
標準原価計算において、固定製造間接費の取り扱いは方法によって異なります。全部標準原価計算では、固定製造間接費を基準個数で配分し、製品1個あたりの原価を計算します。一方、直接標準原価計算では、固定製造間接費を原価標準に加えない方法です。それぞれの方法には特徴があり、企業のニーズに合わせた計算方法を選択することが重要です。