固定資産の減損における割引後キャッシュフローの使用理由とは

簿記

固定資産の減損処理において、割引後キャッシュフロー(DCF)を使用する理由が理解しづらいという方も多いかと思います。特に、割引前キャッシュフローと割引後キャッシュフローの違いに関する疑問が生じることがあります。この記事では、なぜ減損損失の計上時に割引後キャッシュフローが使われるのか、その背景を詳しく解説します。

固定資産の減損とは

減損とは、企業が保有する固定資産が回収可能額を下回ることが確定した場合、その差額を損失として計上する会計処理です。減損損失の計上には、回収可能額の算定が不可欠であり、この回収可能額は将来のキャッシュフローを割引いた金額で算定します。

この回収可能額には「割引前キャッシュフロー」と「割引後キャッシュフロー」の2つの方法があるため、どちらを使用するべきかという点が問題になります。

割引後キャッシュフロー(DCF)の使用理由

割引後キャッシュフロー(DCF)は、将来にわたるキャッシュフローの現在価値を算定する方法です。これを使用する理由は、時間価値を考慮するためです。お金の価値は時間とともに変化し、将来のキャッシュフローは現在のキャッシュフローと同じ価値を持っていないため、割引を行う必要があります。

例えば、1年後に受け取る100万円と今受け取る100万円は、その価値が異なります。現在のお金を銀行に預ければ利息がつくため、将来の100万円は現在の100万円と同じ価値を持たないという理論に基づいています。

固定資産と利息の違い

固定資産には直接的に利息がつくわけではありませんが、将来のキャッシュフローには時間価値が影響を与えます。つまり、将来のキャッシュフローをそのまま現在の価値として扱うと、過大評価となってしまう可能性があるため、割引後のキャッシュフローを使うことでより正確な評価が可能となります。

この考え方は、例えば退職給付会計や資産除去債務の評価にも共通しており、将来の支出や収入を現在価値に引き直すことが、より現実的な評価を提供するためです。

割引前キャッシュフローと割引後キャッシュフローの違い

割引前キャッシュフローは将来のキャッシュフローをそのまま現在価値として評価する方法であり、割引後キャッシュフローはそのキャッシュフローに対して適切な割引率を適用して現在価値を算出します。

例えば、ある固定資産の簿価が100万円で、割引前キャッシュフローが90万円、割引後キャッシュフローが80万円の場合、割引後キャッシュフローを使用して減損損失を計上する理由は、将来のキャッシュフローの時間的価値を考慮するからです。

まとめ

固定資産の減損処理において、割引後キャッシュフローを使用する理由は、貨幣の時間価値を適切に反映するためです。割引前キャッシュフローを使うと、将来のキャッシュフローの価値が過大評価される可能性があり、現実的な回収可能額を反映させるためには割引後キャッシュフローを使用することが必要です。この考え方は、他の会計処理にも共通する重要な概念となっています。

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