起業という言葉は「会社をつくる」「事業を始める」といったイメージが強く、営利目的の法人を思い浮かべがちです。しかし、近年では社会課題に取り組む非営利法人の設立も「起業」の一形態として注目されています。この記事では、非営利法人の設立が起業と呼べるのか、またその背景や実際の事例を踏まえて解説していきます。
「起業」の定義とは?
起業とは一般的に「自らの意思で事業を興すこと」を指します。営利企業を立ち上げることが主流ですが、必ずしも利益の追求を目的とする必要はありません。社会的な使命を持って活動する非営利法人やNPO法人の設立も、れっきとした起業の一形態といえるのです。
実際、ビジネス書や起業支援の現場でも「社会起業家」という言葉が登場するように、社会的価値の創出を目的とした法人設立も広く認知されつつあります。
非営利法人とは?どんな種類がある?
非営利法人とは、収益の分配を目的とせず、社会的な目的の達成を主眼とした法人形態です。代表的なものとしては以下のような種類があります。
- NPO法人(特定非営利活動法人)
- 一般社団法人・一般財団法人(非営利型)
- 社会福祉法人
- 医療法人
たとえば、環境保護、子育て支援、教育支援、地域活性化などを目的に活動するNPO法人は、寄付や助成金を主な財源としつつ、持続可能な運営を目指しています。
非営利法人を立ち上げることは「起業」と言える理由
非営利法人の設立は、事業計画の立案、資金調達、人材確保、法人登記など、多くの起業プロセスと共通しています。また、社会的課題を見出し、それを解決するためのビジョンを掲げるという点で、起業家精神にあふれた行動とも言えます。
「社会を変えるための仕組みをつくる」という視点では、営利か非営利かに関係なく、それは起業そのものと捉えて問題ありません。
実例紹介:非営利で起業した人たち
たとえば、ある30代の女性は、子どもの貧困問題に取り組むNPO法人を立ち上げました。彼女は「収益」よりも「地域の子どもたちの安全と未来」を優先し、地域の協力を得ながら支援活動を展開しています。
また、元サラリーマンの男性が退職後に介護支援の一般社団法人を設立し、地域の高齢者を対象に無料相談や訪問サービスを行っている例もあります。どちらも法人設立を経て事業を運営しており、明らかに「起業」と言える内容です。
営利法人との違いと注意点
非営利法人と営利法人では、収益の分配や事業目的に違いがあります。非営利法人は利益を構成員で分配せず、活動の継続や目的達成に使います。したがって、事業計画や資金管理も少し異なります。
また、非営利法人でも一定の収益事業は行えますが、税制優遇を受けるためには要件を満たす必要があるため、設立前に専門家への相談が推奨されます。
まとめ:非営利法人の設立も立派な「起業」
営利を追求する法人だけが「起業」とされる時代は終わりつつあります。社会的な課題に取り組む非営利法人の設立も、自らのビジョンを実現するという意味で、十分に「起業」と言えます。志を持って行動するすべての人に、起業家の精神が宿っているのです。