管理会計論の学習では「事業部の業績評価」が重要なテーマのひとつです。その中で、投下資本利益率(ROI)と残余利益(RI)の計算において、利益を税引前で扱うのか税引後で扱うのかは、多くの学習者が悩むポイントです。本記事では、それぞれの考え方と実務・試験上での扱いを整理し、理解を深めていきます。
投下資本利益率(ROI)とは
投下資本利益率(ROI: Return on Investment)は、事業部に投下した資本に対してどれだけの利益を生み出したかを測る指標です。一般的には以下の式で表されます。
ROI = 利益 ÷ 投下資本
この「利益」を税引前で計算するのか、税引後で計算するのかは、評価の目的によって異なります。税引前であれば税制の影響を排除でき、事業部本来の収益性を把握しやすい点がメリットです。一方、税引後を用いれば、より実際の利益水準に近い評価が可能となります。
残余利益(RI)の考え方
残余利益(Residual Income: RI)は、投下資本に見合った資本コストを差し引いた後に残る利益を示します。計算式は以下の通りです。
RI = 利益 − (投下資本 × 資本コスト率)
問題文に「資本コスト率は税引前目標投下資本利益率を用いること」と記載されている場合、通常は税引前利益を用いて計算を行うのが適切です。これは、資本コストも税引前で設定されているため、対応を一致させる必要があるからです。
試験や学習での使い分け
試験問題では、指示が明確に書かれている場合には必ず従う必要があります。「税引前」と指定されていれば税引前利益を使い、「税引後」とされていれば税引後利益を使います。指示がない場合、一般的には税引後利益を基準にすることが多いですが、テキストや問題集の傾向に従うことが望ましいです。
例えば、ROIは税引前を採用し、RIは税引前資本コストに合わせて税引前利益を用いる、といった形で一貫性を持たせるのが基本です。
実務での実例
ある製造業の事業部門では、ROIを税引前で計算し、残余利益も税引前資本コストに基づいて算出しています。これにより、法人税率の違いによる事業部間の比較の歪みを避け、純粋に事業部の収益力を測ることができます。
一方で、投資判断や株主向けの資料では、実際に手元に残る利益を重視するため税引後利益を用いるケースもあります。このように、目的に応じて使い分けられているのです。
まとめ
管理会計論における投下資本利益率と残余利益は、それぞれの評価目的や資本コスト率の設定に応じて「税引前」か「税引後」を選ぶ必要があります。試験では問題文の指定に従うことが第一ですが、基本的な考え方としては以下のように覚えておくと整理しやすいでしょう。
- ROIは税引前を用いるケースが多い
- RIは資本コスト率に合わせて税引前または税引後を選ぶ
一貫性を意識することで、混乱せずに計算できるようになります。
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