介護業界ではシフト制勤務が多く、変形労働時間制を採用している事業所も少なくありません。しかし「実際の運用が法律通りなのか分からない」「有休を取った場合の時間計算はどうなるのか」など、現場で疑問を持つ声は多く聞かれます。今回は、変形労働時間制と有給休暇の関係について、わかりやすく整理します。
変形労働時間制とは何か
変形労働時間制とは、一定期間(1か月や1年など)を平均して法定労働時間の範囲に収めれば、日ごと・週ごとに労働時間が変動してもよいという制度です。例えば「1か月単位の変形労働時間制」の場合、月の総労働時間を法定内(例:177時間程度)に抑えるよう調整されます。
したがって、ある日は10時間働いても、別の日に6時間勤務があれば、1か月全体として法定時間内に収まるよう運用される仕組みです。
有給休暇を取得した場合の取り扱い
有給休暇を取得した場合、その日の所定労働時間分が労働したものとして扱われます。例えば、シフトで8時間勤務が割り当てられていた日に有休を使えば「8時間勤務した」とカウントされます。
つまり、有休を取った分は「欠勤扱いで時間が減る」のではなく、予定されていた勤務時間がそのまま労働時間として算入されるのが原則です。
シフト調整で有休時間が減らされるケース
一部の事業所では、有休を取得するとその日の勤務が「0時間」扱いになり、総労働時間から引かれてしまうことがあります。これは誤った運用であり、労働基準法に反します。
例えば、187時間勤務予定で有休2日(16時間)を取った場合、本来は「171時間労働した」ではなく「187時間労働予定のうち16時間は有休で労働扱い」となるため、時間調整で減らされることはありません。
介護現場でありがちな誤解
介護施設では「変形労働だから有休の扱いが違うのでは?」と思われがちですが、実際には変形労働制と有休のルールは別です。有休はあくまで所定労働日に割り当てられた時間分を保障する制度であり、会社側が勝手に時間を調整して減らすことはできません。
実際に「有休を使ったらシフトが調整されて労働時間が減った」という事例は労基署でも問題視されるケースがあります。
対応策と相談先
もし有休が正しく扱われていないと感じた場合、以下の対応が考えられます。
- まずは会社に労基法上の有休の考え方を確認する
- 勤務実績やシフト表をコピーして記録を残す
- 改善されなければ労働基準監督署へ相談する
また、介護業界は人員不足の影響で法令遵守が甘くなる傾向があるため、同業者の労働相談や地域の労働組合に問い合わせるのも一つの手段です。
まとめ
変形労働時間制であっても、有休は「所定労働時間分を労働したものとみなす」のが原則です。シフト調整によって有休時間が減らされるのは誤った運用であり、長期的に泣き寝入りせず声を上げることが重要です。自分の権利を正しく理解し、安心して働ける環境を整えていきましょう。
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