特許の等価侵害と均等論:具体例でわかりやすく解説

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特許における「均等論」や「等価侵害」は、請求項のすべてに完全に一致しない場合でも、技術的に類似している場合に侵害と認定される概念です。しかし、これらの概念を理解するのは難しいこともあります。この記事では、均等論と等価侵害をわかりやすく説明し、具体例を挙げてその仕組みを解説します。

1. 均等論とは?

均等論(または等価侵害)は、特許請求項に記載された発明と完全には一致しないが、その本質的な部分が技術的に同等である場合に、侵害と認定される理論です。特許請求項に記載された特徴と、他の技術が異なっている場合でも、その技術が本質的に同じ効果を得ている場合、侵害と見なされることがあります。

この理論は、特許権者の権利を守り、特許発明の効果が不正に利用されることを防ぐために重要です。

2. 等価侵害の例

等価侵害の具体的な例としては、以下のようなケースがあります。

  • 例1: 車のブレーキシステム:ある特許は「油圧ブレーキシステム」に関するもので、請求項には「油圧」と記載されています。しかし、他の企業が「空気圧」を使用したシステムを作成し、同じ効果を得ている場合、これは「等価侵害」と見なされることがあります。空気圧システムは油圧と技術的に異なるが、目的や効果が同じであるためです。
  • 例2: コンピュータの処理回路:ある特許が「Xプロセッサ回路」を基にした発明をカバーしている場合、他の企業が同じ処理機能を持つ「Yプロセッサ回路」を使用しても、XとYが本質的に同じ処理を行う場合、等価侵害として認定されることがあります。

3. 均等論と特許請求項の違い

特許請求項に記載された内容と、実際の製品や技術が完全に一致しない場合、均等論を適用することで侵害が認定されることがあります。しかし、請求項の要件があまりにも明確であれば、均等論が適用される余地は少なくなります。例えば、請求項において「特定の成分」が記載されている場合、その成分を完全に同じものに置き換えなければ侵害が認定されません。

一方で、特許請求項が広範である場合、均等論の適用範囲が広がり、似たような技術が侵害と見なされる可能性が高まります。

4. 具体的な裁判例から学ぶ

特許侵害における均等論や等価侵害について、過去の裁判例を参照することも理解を深めるために有益です。例えば、ある特許の請求項に記載された「特定の形状の部品」を「異なる形状の部品」で置き換えた場合でも、その効果が同じであれば、裁判所は等価侵害と認定したケースがあります。このような事例は、技術的に類似した発明が特許権を侵害する可能性があることを示しています。

このように、裁判所は発明の効果や本質を重視し、単なる外観や表現の違いではなく、その技術的な本質が同じであれば、特許侵害を認定することがあります。

5. まとめ

均等論や等価侵害の概念は、特許権を守るための重要な法理ですが、理解するには技術的な知識と法的な視点が必要です。実際に侵害を訴える際には、特許請求項と実際の技術の違いを十分に理解し、どの程度の技術的等価性が認められるかを判断する必要があります。

また、裁判所の判断においては、発明の本質や効果が同じであれば、外形や形式の違いに関係なく侵害が認められる可能性があることを知っておくことが重要です。

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