ティグ溶接において、鉄とステンレスは異なる特性を持っており、そのため溶接時に酸化の仕方にも違いが現れます。また、バックシールドの使用もこれらの素材によって異なることがあります。この記事では、ステンレスが酸化しやすい理由と、バックシールドの使い分けについて解説します。
ステンレスが酸化しやすい理由
ステンレスは、鉄にクロム(Cr)などの合金成分が含まれた材料であり、特に耐食性が優れているとされています。しかし、この耐食性を高めるために、ステンレスには酸化を防ぐ酸化皮膜が形成されます。この酸化皮膜は、酸素と反応して生成される酸化クロム(Cr2O3)です。
しかし、ステンレスは高温下での酸化が進みやすい特徴もあります。これは、溶接時に高温が発生し、酸化皮膜が破壊されやすくなるからです。特に溶接部分では、酸素との接触が多くなるため、鉄よりも酸化が進みやすくなります。これが、ステンレスが鉄より酸化しやすい理由の一つです。
鉄とステンレスの酸化の違い
鉄は、酸素と反応して酸化鉄(Fe2O3)を形成します。鉄は比較的酸化しにくい金属ですが、酸化鉄の皮膜は不安定であるため、酸化が進みやすく、腐食が広がる可能性があります。特に鉄は、酸化が進むとサビとして見られる赤褐色の物質が表面に現れます。
一方、ステンレスは酸化クロムの皮膜が形成されることで耐食性を持っています。しかし、この皮膜が溶接の熱や高温によって破壊されると、酸化が進行し、見た目にも不安定な状態になります。そのため、ステンレスは高温環境での酸化が進みやすい特徴を持っています。
バックシールドの使用と酸化の関係
ティグ溶接では、溶接部分が酸素と接触することで酸化が進みます。このため、バックシールドという保護ガスを使用して、酸素と接触しないようにすることが重要です。特にステンレスを溶接する場合、バックシールドを使用しないと、溶接部に酸化が進んでしまい、品質に悪影響を与える可能性があります。
鉄に比べてステンレスは酸化しやすいため、バックシールドはステンレスの溶接時に特に重要な役割を果たします。バックシールドを使用することで、酸化を防ぎ、溶接部の品質を高めることができます。しかし、鉄においては酸化が少ないため、バックシールドを使用しなくても一定の品質が保たれることが多いです。
バックシールドの重要性と適用範囲
バックシールドは、溶接時に酸化を防ぐために使用されますが、その使用範囲は素材によって異なります。ステンレスの場合、酸化を防ぐために必須となることが多いですが、鉄の場合はあまり必要とされないことが多いです。
バックシールドを使用することで、溶接部が酸化しにくく、強度や耐食性が向上します。そのため、特に高品質な溶接が求められるステンレスの溶接では、バックシールドの使用が推奨されます。
まとめ
ティグ溶接において、ステンレスは鉄よりも酸化しやすい理由は、高温での酸化皮膜の破壊や酸素との接触が影響するためです。これに対し、バックシールドは特にステンレスの溶接時に有効で、酸化を防ぐ重要な役割を果たします。鉄は比較的酸化しにくいため、バックシールドがなくても一定の品質が保たれることが多いですが、ステンレスの溶接では欠かせない技術と言えるでしょう。