相見積もりを下請けが準備するのはアリ?法的リスクと実務上の注意点を徹底解説

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建設業や設備工事の現場で頻繁に行われる「相見積もり」。元請業者が複数の業者から見積もりを取り比較するのは健全な契約プロセスの一環ですが、最近ではその相見積もりの準備を下請業者に丸投げするケースも増えています。とくに「見積書を2通提出してほしい」「他社の見積もりも用意してほしい」などと求められた場合、倫理的・法的に問題はないのか気になるところです。本記事では、そのような状況にどう向き合えばよいのかを、実務例や法的視点を交えてわかりやすく解説します。

相見積もりの基本的な目的とは?

相見積もり(あいみつもり)とは、発注者が複数の業者から見積を取り、価格・条件・納期などを比較検討するプロセスのことです。適正価格の確保や透明性のある取引の実現を目的とし、公共工事はもちろん、民間工事においても一般的な手法です。

発注側が業者を選定するための材料とするものであり、原則として元請(発注者)が主導するのが筋です。

元請が下請に相見積もりの準備を依頼するのはアリ?

実務では「相見積もりの用意を下請に丸投げ」される場面もありますが、これはあくまでも発注側の業務を請負側に肩代わりさせる構図となります。法律で明確に禁止されているわけではありませんが、以下の点で問題が生じる可能性があります。

  • 競争の形骸化(出来レースのような状況)
  • 公正取引や談合に抵触するリスク
  • 形式的な見積により契約の適正性が損なわれる

とくに自社で金額を変えた見積書を2通出すよう求められるケースは、「見積書の偽装」と捉えられる可能性もあるため、注意が必要です。

法的リスクと考えられる問題点

このような慣習的な行為が、明確な違法行為として問われることは稀ですが、状況によっては以下の法律に触れるおそれがあります。

法律名 該当の可能性
独占禁止法 談合と見なされれば不当な取引制限として違法
建設業法 適正な契約の原則に反する恐れ(第19条など)
民法・商法 虚偽見積による契約締結で、契約の無効や損害賠償の対象になり得る

元請に従った結果、法的責任を問われるのは下請側になるリスクもあるため、十分な注意が求められます。

実例:トラブルにつながったケース

【例1】ある設備業者が、元請の依頼で2社分の見積を提出したが、後にもう1社が実在していないと判明。発注元企業の監査で問題視され、信頼を失う結果に。

【例2】建築業のB社では、過去の工事で形式上の相見積を用意したが、競合会社との情報共有が明るみに出て、談合の疑いで取引停止処分を受けた。

元請の依頼にどう対応すべきか?

依頼を拒否するのが難しい立場であっても、下記のような対応でリスクを軽減することが可能です。

  • 「他社への相見積依頼は元請側でご手配を」と丁寧に提案
  • 見積書を2通出す場合は、仕様や工期・範囲に明確な差を設ける
  • 見積の原本管理や、他社との関係性が不透明なケースは慎重に対応

社内で法務・コンプライアンス担当と連携し、判断基準を共有しておくのも大切な対策です。

まとめ:形式的な相見積もりには要注意。下請もリスク管理を

相見積もりは透明な競争原理の一環ですが、その運用方法によっては法的・倫理的な問題を引き起こす可能性があります。元請の依頼であっても、下請が主体となって相見積を作成する場合は、内容や体裁に注意が必要です。

健全な取引関係を築くためにも、疑義のある依頼には毅然とした姿勢で臨み、必要であれば専門家に相談することが望ましいでしょう。

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