日商簿記の勉強を進める中で、減価償却に関するタックスシールドの考え方は重要なポイントです。しかし、正味現在価値(NPV)と会計投資利益率(ARR)の計算方法において、タックスシールドが取り入れられる場合と取り入れられない場合があり、混乱を招くことがあります。この記事では、この違いを明確に解説します。
タックスシールドとは?
タックスシールドとは、企業が減価償却を行うことによって得られる税金の節約効果を指します。減価償却を行うことで、税引き前の利益が減少し、その結果として税額が軽減されるため、キャッシュフローの改善が期待できます。この節税効果は企業にとって非常に重要な要素であり、投資の判断に大きな影響を与えることがあります。
タックスシールドの計算には、減価償却費用が控除された後の税額の減少分を算出し、それを現在価値に割り引いて考えます。これにより、投資の収益性を正確に把握することが可能になります。
正味現在価値(NPV)とタックスシールド
正味現在価値(NPV)は、将来のキャッシュフローを現在の価値に割り引き、初期投資を差し引いたものです。この計算においては、タックスシールドを取り入れることが一般的です。
なぜなら、NPVの計算では実際のキャッシュフローを重視するからです。減価償却によるタックスシールドは、企業のキャッシュフローを改善するため、NPVを計算する際にはその影響を反映させる必要があります。したがって、タックスシールドはNPVの計算において重要な要素となります。
会計投資利益率(ARR)とタックスシールド
一方、会計投資利益率(ARR)は、平均利益を初期投資で割って求める指標です。この計算では、減価償却によるタックスシールドを考慮しないことが一般的です。
なぜなら、ARRはキャッシュフローを直接的に扱わず、会計上の利益を基に計算されるためです。会計上の利益は税引き後の利益を元に算出されるため、減価償却の影響をそのまま含むことになります。タックスシールドを含めると、利益が過大に評価される可能性があり、ARRの本来の目的である投資効率を正確に評価するためには、この影響を排除する必要があります。
タックスシールドを加えるべき場合と加えないべき場合
タックスシールドを加えるべきかどうかは、使用する指標によって異なります。NPVでは、タックスシールドを加えることでキャッシュフローの改善を反映させ、投資判断に役立てます。一方、ARRでは、純粋に会計上の利益を用いて評価を行うため、タックスシールドは加えません。
このように、タックスシールドを加えるかどうかは、評価する指標の目的や特性に依存します。投資評価の目的に応じて、適切な方法を選択することが重要です。
まとめ
タックスシールドは、減価償却を通じて得られる税金の節約効果であり、NPVの計算においては重要な要素です。しかし、会計投資利益率(ARR)では、純粋な利益を基に評価するため、タックスシールドを加えることはありません。これらの違いを理解することで、投資評価の精度を高め、より良い意思決定を行うことができます。


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