企業価値の算定方法として、DCF法(割引キャッシュフロー法)やEVA法(経済的付加価値法)が用いられますが、特にEVA法における投下資本の扱いについて理解が難しい方も多いでしょう。特に、「なぜEVAでは割り引いた後に投下資本を戻すのか?」という疑問に関して、この記事ではその理論的背景と実務での使い方について解説します。
1. DCF法とEVA法の基本的な違い
DCF法とEVA法は、どちらも企業価値を評価するための手法ですが、アプローチにおいて大きな違いがあります。DCF法は将来のフリーキャッシュフロー(FCF)を割引いて企業価値を算定する方法で、投下資本の変動を直接反映させます。一方、EVA法は、経済的付加価値を算出し、企業の純利益から資本コストを引いた額を基に評価を行います。EVA法では、企業がどれだけ「資本コスト」を超えて利益を生み出しているかに焦点を当てます。
この違いにより、EVA法とDCF法では投下資本の取り扱いが異なります。
2. EVA法における投下資本の戻し方
EVA法では、企業が使用した資本に対するコスト(資本コスト)を引いた後、その利益を企業価値に反映させます。しかし、EVA法で算出した経済的付加価値(EVA)は、あくまでその年の資本コストを差し引いた後の価値です。このため、投下資本(企業が使用する資本)の金額を戻すことで、実際に企業がどれだけ利益を上げたかを正確に反映させることが求められます。
一方で、DCF法では投下資本をすでに反映させたキャッシュフローを基に企業価値を算出するため、EVA法のように投下資本を「戻す」必要はありません。
3. EVA法で投下資本を戻す理由
投下資本を戻す理由は、EVA法が「経済的利益」を重視しているからです。EVA法では、企業がどれだけ資本コストを超えて利益を生んでいるかを評価しますが、資本コストを差し引いた後の利益だけでは、実際に企業がどれだけ資本を活用しているのかが分かりません。したがって、投下資本を戻すことで、企業が生み出した利益が実際の企業価値にどう反映されるかを正確に評価することができます。
この方法により、EVA法では企業がどれだけ効率的に資本を使用して利益を生んでいるかを評価でき、投下資本の回収過程がより明確になります。
4. DCF法との投下資本の取り扱いの違い
DCF法では、投下資本を運転資本や設備投資の増減に基づいて計算し、キャッシュフローに含めることで企業価値を算定します。このため、投下資本はキャッシュフローに含まれており、資本コストを控除する必要はありません。
一方、EVA法では、企業が使用する資本のコストを差し引いた後に、資本の金額を「戻す」ことで、企業がどれだけ利益を生み出したかを評価します。これにより、EVA法は企業の「経済的価値創造」に焦点を当て、資本コストを上回る利益を算出することが可能となります。
まとめ:EVA法とDCF法の違いと投下資本の取り扱い
EVA法とDCF法では、投下資本の取り扱い方に明確な違いがあります。EVA法では資本コストを差し引いた後、実際の企業価値を反映させるために投下資本を戻す必要があります。一方、DCF法では投下資本がキャッシュフローに含まれているため、戻す必要はありません。
どちらの方法も企業価値を評価する上で重要な手法ですが、それぞれのアプローチに基づいた適切な投下資本の扱いが必要です。これを理解することで、より正確な企業価値の算定が可能になります。
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