棚卸減耗の評価方法は、簿記1級や税理士試験の学習者が混乱しやすい論点のひとつです。特に「先入先出法の場合、減耗は先に仕入れたものから控除するのか」「期末の最新単価で評価するのか」という点は、試験ごとに解釈が異なるため注意が必要です。この記事では、試験での正しい対応と考え方を整理します。
棚卸減耗とは何か
棚卸減耗とは、商品の破損・紛失・劣化などにより帳簿上の数量と実際の棚卸数量が一致しなくなることを指します。実務では「棚卸差異」として処理されますが、試験問題では評価方法が明確に問われる場合があります。
特に先入先出法や移動平均法などの在庫評価方法と結びついて出題されることが多いため、評価の前提を理解しておくことが重要です。
簿記1級試験における考え方
簿記1級では、問題文に特段の指示がない限り期末棚卸高の評価に基づく最新単価を用いるのが一般的です。これは、期末に残っている商品が最新の仕入単価で構成されるという考え方から合理的とされます。
例えば、先入先出法を採用していても「減耗がいつ発生したかは不明」という前提に立ち、期末に残っている商品と同じ単価(最新単価)を用いて減耗費を計算するのが基本的な解法です。
税理士試験における考え方
一方、税理士試験では「先入先出法の場合、先に仕入れた商品から減耗が発生したと考える」というテキスト上の定義が使われる場合があります。これは理論問題や一部の計算問題で採用され、指示がなくても「先入れ先出し」を厳密に適用して処理する傾向が見られます。
ただし、実務や簿記1級的な考え方に基づき「最新単価で評価」する処理も存在するため、試験ごとのルールに従う姿勢が大切です。
実例で比較
例:商品を100円、120円、150円で順に仕入れ、期末に棚卸減耗が10個発生した場合。
- 簿記1級:期末の最新単価150円で評価 → 減耗費1,500円。
- 税理士試験:先入先出法の原則を適用し、最も古い100円から減耗と考える → 減耗費1,000円。
このように、同じ前提でも試験ごとに異なる答えになる可能性があるため、過去問や公式テキストの立場に従うことが正解につながります。
解答時の判断ポイント
- 問題文に「評価方法」や「単価計算方法」が明示されている場合 → 指示に従う。
- 簿記1級の場合 → 指示がなければ最新単価(期末評価基準)。
- 税理士試験の場合 → テキスト記載の「先に仕入れたものから減耗」原則を優先。
特に税理士試験はテキスト準拠で出題される傾向が強いため、実務感覚よりも試験用のルールを重視すべきです。
まとめ
棚卸減耗の評価方法は、簿記1級と税理士試験で解釈に違いがあります。
簿記1級:最新単価で評価、税理士試験:先入先出法なら古い仕入単価で評価というのが基本です。試験ごとのルールを正しく理解し、問題文に従う姿勢が合格への近道となります。
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