取締役が一人しかいない会社で、その取締役が辞任し新任取締役を選任する場合、臨時株主総会を開催することになります。このとき、株主総会の議長や出席株主数の扱いについて迷うケースがあります。会社法上のルールや実務上の整理を踏まえて解説します。
株主総会の議長は誰が務めるのか
会社法では、株主総会の議長は定款で定められることが多いですが、定めがない場合は株主総会で選任されます。通常は現職の取締役または株主が議長を務めるのが一般的です。
取締役の辞任と新任の選任を同一の総会で行う場合、まずは現任の取締役(辞任予定者)が議長を務め、議案の承認後に辞任・選任が成立するという流れが自然です。ただし、定款や株主総会の決議で別途定めることも可能です。
議決権を持つ株主数の扱い
株主総会で重要なのは「出席株主数」ではなく「議決権数」です。株式を100%保有している株主が1名であれば、議決権を行使できるのはその1名のみです。
つまり、取締役が2人出席していても、株主として議決権を有するのは株主本人だけです。そのため、議決権のある株主総数は1名、出席株主数も1名として扱われます。
「出席者数」と「株主数」の違い
株主総会の議事録には「出席株主数」を記載しますが、これは株主としての出席人数です。株主でない新任取締役候補者や辞任する取締役が同席していても、それは「出席取締役」として記録されるだけで「出席株主数」には含まれません。
例えば、株主が1名で、その場に現任取締役と新任取締役候補者が同席している場合、議事録には「出席株主1名、出席取締役2名」と記載するのが正確です。
実務上の整理例
臨時株主総会を開催する場合の流れを例示します。
- 株主総会の議長は現任取締役(辞任予定者)が務める
- 議決権を行使する株主は1名(株式100%保有者)
- 議事録には「出席株主数:1名」「出席取締役数:2名」と記載
- 株主総会で取締役辞任および新任取締役選任の決議を行う
このように、役割を明確に分けて記録すれば法的にも実務的にも問題ありません。
まとめ
取締役交代時の株主総会において、議長は通常辞任予定の現任取締役が務め、議決権のある株主数は100%保有者の1名となります。新任取締役候補者や辞任取締役は「出席者」として扱われます。株主総会議事録では「株主」「取締役」の出席者を区別して記録することが重要です。
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