企業倒産のニュースは、近年ますます注目を集めています。新型コロナウイルスやウクライナ戦争、トランプ政権時代の関税政策、人手不足、経営者の高齢化、インボイス制度の導入など、外部環境の変化が企業経営に大きな影響を与えているのは事実です。しかし一方で、「コロナがなくても倒産していた」といわれるケースも少なくありません。この記事では、こうした外部要因と内部要因がどのように倒産に結びつくのかを解説します。
コロナウイルスが与えた影響
新型コロナウイルスは、飲食業や観光業を中心に大きな打撃を与えました。需要の急減、休業要請による売上喪失が続き、資金繰りに窮する企業が急増しました。
一方で、ゼロゼロ融資や協力金、支援金によって延命できた企業も多く、その中には根本的な経営課題を抱えたまま存続していた「ゾンビ企業」も含まれていました。こうした企業は支援終了後に体力を失い、倒産に至るケースが目立ちます。
ウクライナ戦争や国際情勢の影響
ウクライナ戦争は原材料価格の高騰や物流の混乱を招き、製造業や小売業にコスト増をもたらしました。また、エネルギー価格の上昇は幅広い業種に負担となり、特に中小企業にとっては資金繰り悪化の大きな要因になっています。
同様に、過去のトランプ政権による関税政策も輸出入企業の収益を直撃し、グローバル経済の不安定要因として倒産リスクを高めました。
人手不足・経営者の高齢化
日本特有の課題として、人手不足と経営者の高齢化があります。慢性的な労働力不足は、サービス業や介護業界を中心に深刻です。従業員が集まらず事業継続が困難になる「人手不足倒産」は年々増加しています。
また、中小企業の多くは経営者が高齢化しており、後継者不足が問題化しています。黒字であっても後継者がいないために廃業や倒産に追い込まれるケースも少なくありません。
物価高騰とインボイス制度の影響
近年の急激な物価高騰は、仕入れコストの上昇を価格転嫁できない企業にとって大きな負担となっています。体力のある大企業と異なり、中小企業は価格交渉力が弱いため、赤字に陥りやすい状況です。
さらに、2023年に導入されたインボイス制度は、小規模事業者に新たな事務負担やコストを課すこととなり、体力の乏しい事業者に追い打ちをかける結果になっています。
「コロナがなくても倒産していた」と言われる理由
一部の企業は、コロナ以前からすでに収益構造が脆弱であったり、過剰債務を抱えていたりしました。コロナはあくまで「引き金」にすぎず、本質的には経営改善がなされていなかったために倒産が避けられなかったのです。
延命措置によって一時的に存続した企業が、支援終了後に一斉に倒産することが「ゾンビ企業」の存在を示しています。これは日本経済が抱える構造的な課題でもあります。
失われた30年・40年の文脈で考える
日本経済はバブル崩壊以降、長期停滞が続き「失われた30年」と呼ばれます。今後さらに長期化する可能性も指摘される背景には、生産性の低迷、人口減少、イノベーション不足といった根本的な課題があります。
倒産の増加はこれらの構造問題と密接に関係しており、一時的な外的ショックにとどまらない日本経済全体の課題を浮き彫りにしています。
まとめ
企業倒産は単にコロナや戦争といった一時的要因だけでなく、経営者の高齢化、人手不足、物価高騰、構造的な競争力不足など複合的な要因によって引き起こされています。「コロナがなくても倒産していた」といわれる背景には、すでに経営基盤が脆弱だった企業が延命措置によって生き残っていた実態があります。
今後の日本経済を考える上では、こうした外的ショックと内部要因の両方に目を向け、持続可能な経営基盤を整えることが重要です。
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