物価高騰が続く中、仕入れ価格の上昇にどう対応すべきか悩む経営者や販売担当者は少なくありません。価格転嫁の判断基準を、利益率や顧客満足度の視点から解説します。
価格設定の基本:粗利益額と利益率の考え方
価格設定の議論では、「粗利益額」と「利益率」のどちらを優先するかが重要です。
たとえば、仕入れ100円・売値200円の場合、粗利益は100円、利益率は50%。仕入れが130円に上がったとき、売値を230円にすれば粗利益100円を維持できますが、利益率は約43.5%に下がります。
実例で比較:30円値上げ vs 30%値上げ
仕入れ:100円 → 130円(+30円)
- 30円値上げ(200円→230円): 粗利益100円・利益率43.5%
- 30%値上げ(200円→260円): 粗利益130円・利益率50%
同じ仕入れ原価でも、どこまで価格を上げるかで利益の構造が大きく変わります。
どちらが適切か:目的による選択
●利益率を維持したいなら→パーセンテージで調整(例:260円)
●価格感や競争力を重視するなら→額面調整(例:230円)
業界や商品の性質、客層によって「値上げの妥当性」は変わるため、ケースバイケースの判断が求められます。
値上げの受け入れられ方を左右する要素
- 価格帯: 高価格帯ほど値上げのインパクトは相対的に小さい
- 代替性: 類似品があるかどうかで値上げの許容度が変化
- 説明の有無: 価格変更の理由を顧客に明示することも重要
実店舗やECでの対応例
●小売チェーンA社では、仕入れ価格の上昇に応じて段階的に10円単位で調整。
●オンライン販売B社は、利益率を維持するために売価を%で一律変更し、顧客にはメールで理由を説明。
まとめ:価格は戦略、数値だけで決めない
「30円上げるか?30%上げるか?」という問いに正解はありません。目的に応じて粗利益を重視するのか、利益率を守るのか、または顧客維持を優先するのかで判断が変わります。
価格設定は“戦略”であり、数値だけでなく市場や顧客心理、ブランド価値を含めた総合的判断が必要です。
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