有価証券報告書に記載される「繰延税金資産・負債」の項目について、特に退職給付に係る資産が繰延税金負債に含まれる理由やその意味について解説します。この点について理解を深めることは、企業の財務諸表をより正確に読み解くために重要です。
繰延税金資産・負債とは?
繰延税金資産・負債は、企業が税務上の処理と会計上の処理の間に生じる差異に基づいて発生します。税務上の収益や費用が、会計上の収益や費用とタイミングが異なる場合、その差額が繰延税金資産または負債として計上されます。
例えば、企業が税務上、今後控除可能な費用を計上している場合、それは将来の税金支払いを減少させる効果を持つため、繰延税金資産として計上されます。一方で、税務上、収益の計上が遅れる場合、将来の税金負担が増加するため、それは繰延税金負債として計上されます。
退職給付に係る資産とは?
退職給付に係る資産とは、企業が退職給付制度に基づき、退職給付費用を計上する際に、税務上および会計上の差異が生じることで発生する繰延税金資産の一部です。具体的には、退職給付制度の負担が税法上で異なるタイミングで費用化される場合、この差異が繰延税金資産として記載されます。
これは、退職給付に関連する支出が、会計基準と税法の間で異なるため、税務上で過剰に負担している部分が繰延税金資産として計上され、将来的に税務上でその分を還付されることを意味します。
繰延税金負債に退職給付資産が含まれる理由
退職給付に係る繰延税金負債が発生する場合、これは企業が税務上、退職給付に関連する費用を後回しにしていることに起因します。税法では、退職給付の支払いが発生する前に、税務上でその負担を控除することができる場合があります。
そのため、企業が税務上で退職給付を引き延ばしている場合、将来支払う税金の負担が繰延税金負債として記録されるのです。これが、退職給付に関して繰延税金負債として記載される理由です。
まとめ
繰延税金資産や負債は、会計と税法の間で生じる一時的な差異に基づいて発生します。退職給付に関連する繰延税金負債が記載される理由は、税務上の処理が会計上の処理と異なるタイミングで行われることから来ているのです。これを理解することで、企業の財務諸表における繰延税金に関する項目をより正確に解釈できるようになります。