簿記や財務分析において、投資案を評価するための重要な手法として「正味現在価値法(NPV)」と「内部利益率法(IRR)」があります。これらの手法は、どちらも企業の投資案件の価値を評価するために使用されますが、選択基準において一致しない場合もあります。特に、資本コスト率が影響を与える場面では、その順位付けが異なることがあります。この記事では、なぜ正味現在価値法を優先するべきなのか、企業価値最大化の観点から詳しく解説します。
正味現在価値法と内部利益率法の違い
正味現在価値法(NPV)は、将来のキャッシュフローを現在の価値に割り引いた総額を基に投資案件を評価します。一方、内部利益率法(IRR)は、キャッシュフローの割引率を求め、その割引率が企業の資本コスト率を上回るかどうかを基に評価します。これらの手法は、同じデータに基づいても結果が異なることがあります。
具体的には、NPVは資本コスト率が決まっている場合に、その率を使って正確に評価します。IRRは、資本コスト率と比較して投資案件の利回りを評価するため、同じプロジェクトでもIRRが資本コスト率を超えた場合、投資案件は魅力的とされますが、資本コスト率が変わることで評価が異なる場合があります。
資本コスト率が順位付けに与える影響
資本コスト率は、企業が資金を調達する際のコストを表します。これは、企業が投資案件の評価を行う際に重要な指標であり、投資案件の選定に大きな影響を与えます。資本コスト率によって、NPVとIRRが導き出す順位が異なることがあります。
例えば、IRRが高い投資案件があったとしても、そのIRRが資本コスト率を下回る場合、その投資は実行するべきではありません。逆に、NPVがプラスであれば、その投資は利益を生むと判断されます。したがって、資本コスト率を正しく設定することが、投資案件の評価において非常に重要です。
企業価値最大化と投資案件の選択
企業価値を最大化するためには、利益額の最大化が重要です。利益額が最大となる投資案件を選ぶことが、最終的には企業の価値を向上させます。NPV法は、利益額を最大化する観点から非常に優れた手法とされています。
NPV法による評価は、すべてのキャッシュフローを考慮し、実際に受け取ることのできる利益を計算するため、より現実的な評価を行います。IRRでは、企業が抱えるリスクや資本コストを十分に反映しきれない場合もあり、そのためNPV法を優先することが企業価値の最大化に繋がるとされています。
なぜNPV法が優先されるのか?
NPV法が優先される理由は、将来のキャッシュフローを現在価値に割り引き、投資にかかるリスクや資本コストを正確に考慮することができるためです。IRR法は、利回りが資本コスト率を超えるかどうかを判断基準としますが、複数の投資案件を比較する際に、IRRが資本コスト率を下回った場合でも他の条件を無視してしまう可能性があります。
そのため、企業の利益を最大化するためには、実際に得られる利益を確実に評価できるNPV法を使用することが推奨されます。IRR法はあくまで参考値として使用し、最終的な投資判断はNPV法に基づくべきです。
まとめ
投資案件の評価において、NPV法とIRR法は重要な手法ですが、企業価値の最大化という観点からは、利益額を最大化するNPV法が優先されるべきです。資本コスト率が与える影響を正確に反映し、リスクをしっかりと考慮した投資判断を行うためには、NPV法を重視することが企業の成長に繋がります。