商取引における申込み撤回:大陸法 vs 英米法の違いと適用法について

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商取引において、売買契約の申込みに関する撤回の可否は、法域によって異なる場合があります。特に、大陸法と英米法では申込みの撤回に関して異なる考え方を持っており、国際的な取引ではその違いが重要になることがあります。本記事では、大陸法と英米法の違い、そして日本企業がアメリカ企業に対して申込みを撤回する場合にどちらの法が適用されるのかについて詳しく解説します。

大陸法における申込み撤回の原則

大陸法系(例えばフランスやドイツなど)では、売買契約における申込みは撤回できないという原則があります。申込みがなされると、それは契約締結の意思表示として効力を持つため、原則として撤回が認められません。

そのため、大陸法では申込みを撤回するには、受け手側の同意が必要であり、勝手に撤回することは契約上の義務違反となります。この点が、英米法との大きな違いです。

英米法における申込み撤回の原則

英米法系の法体系(例えばアメリカやイギリス)では、申込みを撤回することが可能であるとされています。これは、申込みが相手方に到達するまでに撤回が行われる限り、その効力が生じないためです。

英米法においては、申込みの撤回が認められる理由として、契約が成立する前の段階では、撤回が可能であることにより、当事者間で自由に契約条件を変更できるという柔軟性が重視されているからです。

国際取引における適用法の選定

日本企業がアメリカ企業に対して申込みを撤回したい場合、どの法体系が適用されるかは契約時に定められた管轄や適用法によって異なります。一般的に、国際商取引においては、契約書に記載された「準拠法」が最も重要な基準となります。

例えば、日本企業とアメリカ企業が売買契約を結ぶ場合、契約書内で「契約に関する問題はアメリカ法を適用する」と規定されていれば、英米法の原則に従って申込みの撤回が可能となります。一方で、契約書に「大陸法を適用する」と記載されていれば、大陸法の原則に基づき申込み撤回が認められません。

実務上の注意点

商取引においては、申込み撤回の規定を事前に契約書で明確に定めることが重要です。また、国際取引では、適用法がどの法域に属するかを確認し、その国の商法に従って行動することが求められます。これにより、後々のトラブルを避けることができます。

例えば、アメリカ企業との取引の場合、英米法が適用される可能性が高いため、申込み撤回について柔軟に対応できる場合がありますが、その際も契約書で明確に条件を定めておくことが重要です。

まとめ

商取引における申込み撤回の可否は、大陸法と英米法の違いによって異なります。日本企業がアメリカ企業に対して申込みを撤回したい場合、契約書に記載された準拠法に基づき、英米法が適用されることが多いでしょう。国際取引においては、法域に応じた適切な対応を行うために、契約書で明確に準拠法を定めることが重要です。

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