簿記一級の試験において、連結原価を計算する際に見積もり正味実現可能価額(NRV)と正常市価基準という言葉が登場しますが、これらの用語はしばしば混同されがちです。名前が違うだけで同じ意味を持つのか、それとも実際には異なる概念を指しているのかを理解することは非常に重要です。この記事では、見積もり正味実現可能価額と正常市価基準の違いとその使い方について詳しく解説します。
見積もり正味実現可能価額(NRV)とは
見積もり正味実現可能価額(Net Realizable Value)は、在庫評価の基準の一つで、在庫品が販売可能な価格から販売にかかるコストを差し引いた金額を指します。具体的には、販売可能な価格から売上にかかる直接的なコスト(例:販売手数料や運搬費)を引いた額がNRVとなります。
この基準は、在庫の評価において、在庫が最終的にどれだけの価値を持つのかを見積もるために使用されます。たとえば、商品の売価が低下した場合や、商品の損傷があった場合など、NRVは減少する可能性があります。
正常市価基準とは
正常市価基準(Normal Selling Price)は、一般的に販売価格のことを指します。この基準は、商品の販売可能価格に基づいて、在庫の評価を行うために使われます。正常市価基準は、基本的に「市場での売価」を意味し、在庫の最終的な売却価格を反映することが求められます。
正常市価基準もまた在庫評価に使われることが多いですが、NRVと違って、販売にかかる費用が差し引かれることはありません。単に商品の市場での売価を基準として評価されます。
見積もり正味実現可能価額と正常市価基準の違い
見積もり正味実現可能価額(NRV)と正常市価基準は、どちらも在庫評価に使われますが、その定義と計算方法には明確な違いがあります。
NRVは、商品の販売可能価格から売上にかかるコストを差し引いた額を基にしているため、商品の最終的な利益性を反映した評価基準です。一方、正常市価基準は、単に市場での販売価格を基にしているため、コストを考慮していません。このため、NRVはコスト面まで考慮したより現実的な評価基準と言えるでしょう。
実務での使い分け
実務において、NRVと正常市価基準はそれぞれ異なる目的で使用されます。NRVは、売上にかかる直接的なコストを考慮することで、より正確な利益を見積もることができます。これに対して、正常市価基準は、市場の売価を基にした簡便な評価方法です。
たとえば、在庫の評価を行う際に、販売価格が変動する可能性がある場合、NRVを基に評価することが望ましいでしょう。逆に、市場での価格が安定している場合などは、正常市価基準を使用することが適切です。
まとめ:見積もり正味実現可能価額と正常市価基準の使い分け
見積もり正味実現可能価額(NRV)と正常市価基準は、在庫評価のための異なる基準であり、それぞれに使いどころがあります。NRVは、販売可能価格からコストを引いた額を基にしたより現実的な評価基準であり、商品の最終的な利益性を反映します。一方、正常市価基準は、販売価格を基にした簡便な評価方法です。
これらの基準を適切に使い分けることで、より正確な在庫評価が可能となります。実務での選択は、在庫の性質や市場環境に応じて判断することが求められます。