職場が足りているのに採用を続ける理由とは？企業が人員を増やす本当の目的を解説

職場がすでにスムーズに回っているのに、さらに人を採用しようとする動きに疑問を持つ人も多いかもしれません。「もう十分な人数がいるのでは？」「新たに採用する意味って何？」と感じるのは自然なことです。

しかし、企業や組織が人員を増やす背景には、単純な即戦力補充以上の目的があることも。この記事では、その理由や企業の戦略的な意図について、実例も交えて詳しく解説します。

将来の人材不足を見越した先行投資

現在は人員が足りていても、数年後にはどうなっているか分かりません。特に団塊世代の退職やベテラン社員の引退が見込まれる業界では、早めに若手を採用して育成する必要があります。

たとえば、製造業や建設業などでは技術継承が大きな課題となっており、経験豊富な社員が抜けた後に備えて、新人のうちから育成していく「長期的視点の採用」が重要になります。

少人数でも職場がうまく回っているように見えるのは、特定の社員が業務をカバーしているからかもしれません。しかし、それが「属人化」につながると、急な退職や病気でその人が抜けたときに業務が滞るリスクがあります。

そのため、あらかじめ余裕を持った人員配置を行い、チーム全体で業務を分担できる体制を構築しておくことが、企業のリスクマネジメントとして重要です。

企業が次のステップとして新しいプロジェクトやサービスを計画している場合、その準備として人員を増やすケースもあります。現時点では稼働していないかもしれませんが、近い将来、部署拡大や業務範囲の広がりが見込まれているのです。

たとえば、IT企業で新たなアプリやシステム開発を見据えて先にエンジニアを採用する、あるいは営業部門を強化するために人を増やすといった事例がそれにあたります。

常にギリギリの人数で回していると、1人あたりの負荷が高まり、結果として離職につながりやすくなります。そこで企業は、人手に余裕を持たせて働きやすい環境を作り、社員の定着率を高めようとしています。

「人手が余る＝無駄」ではなく、「余裕がある＝職場が安定して長く働ける」という意識にシフトしている企業も増えています。

昨今の働き方改革やリモートワーク推進により、フルタイム社員だけでなく、時短勤務や副業人材、フリーランスとの協業など、多様な雇用形態が浸透しつつあります。

そうした中で、チームにさまざまなバックグラウンドを持った人を増やすことにより、柔軟な働き方や新しい視点を取り入れることが可能になります。これも、採用が「人手不足対策」だけでなく「組織の進化」につながっている証拠です。

職場が現在スムーズに回っていたとしても、企業が人を増やす理由は単なる即戦力補充だけではありません。将来の人材不足や属人化への備え、新規事業への展開、離職防止、組織の多様性強化など、多くの戦略的な意図があります。

「今足りてるからもういらない」とは限らないのが、企業経営の難しさであり奥深さでもあります。こうした背景を理解しておくことで、今後自分自身が働く環境においても、より広い視野で物事をとらえることができるようになるでしょう。