近年、多くの企業が抱える共通の課題の一つに「人手不足」が挙げられます。中でも、経理職においては慢性的な人手不足が指摘されており、採用や業務継続に悩む企業が増えています。
経理職が人手不足といわれる背景
経理は企業の財務を支える重要な部門であり、決算業務・税務申告・請求処理・予算管理など多岐にわたる業務を担っています。しかし、専門知識が必要なうえ、業務量も多く、特に繁忙期には長時間労働になることも珍しくありません。
また、高度なスキルを求められる一方で、経理職は人気職種とは言えず、若年層の志望者が少ない傾向にあります。そのため、中途採用市場でも即戦力となる人材の奪い合いが起きています。
実例:中小企業における経理人材の確保難
ある地方の製造業の中小企業では、長年勤めていた経理担当者が定年退職したものの、後任がなかなか見つからず、社長自らが経理業務を兼務する状況に追い込まれました。
求人を出しても応募が少なく、面接に来ても実務経験が乏しいケースが多く、即戦力にはなり得ませんでした。結果、経理代行会社に業務の一部を外注することでようやく業務を回せるようになりました。
なぜ経理の人材は集まりにくいのか?
資格や実務経験が必須であることに加え、日々の細かい処理が多く、ストレスを感じやすい職種でもあります。ミスが許されない環境のため、プレッシャーを理由に離職するケースも少なくありません。
さらに、経理業務はルーチン化しやすく、成長実感を得づらいという声も。若い世代は自己成長や柔軟な働き方を重視する傾向があるため、経理職が敬遠されがちなのです。
人手不足に対する企業の対応策
このような状況を打破するため、多くの企業では以下のような対策を講じています。
- クラウド会計ソフトの導入
- 経理代行サービスの活用
- 経理業務の一部アウトソーシング
- リモートワーク対応による人材の確保
特にクラウド会計ソフトを導入することで、作業時間の削減や業務の可視化が進み、少人数でも業務が回る体制を構築しやすくなります。
今後の経理職に求められるスキル
単なる帳簿管理だけでなく、経営に役立つ数値分析や戦略的な財務視点を持つことが今後の経理職には求められています。
そのためには、日商簿記や税理士資格だけでなく、Excelや会計ソフトのスキル、さらにはマネジメント能力など、より幅広いスキルが重視されるようになっています。
まとめ:経理の人手不足は構造的な課題
経理職の人手不足は一時的な現象ではなく、構造的な課題です。人材の育成・採用に加えて、業務の効率化・自動化・外部委託など、多角的な対策が求められています。
企業側が環境を整えると同時に、経理職に対する正しい理解と評価を広めていくことが、持続可能な経理体制の鍵となるでしょう。